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第0030号 少し複雑な因数分解(その2)


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┃  数学マスターへの道〜少なく覚えてとことん使う〜        ┃
┃         第0030号 (2006/05/22)             ┃
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 前回に引き続き、今回も因数分解を扱います。


 初めて読む方もいるかと思いますので、このメルマガでの記号の書き方につ
いての約束事を2、3書いておくことにします。


 ☆2乗、3乗などの表し方は、^2、^3とします。
 (例)xの2乗 ⇒ x^2

 ☆添え字は_1、_2といった形で書きます。
 (例)数列の初項、第2項などは ⇒ a_1、a_2



──Contents─────────────────────────────

 1.少し複雑な因数分解(その2)
 2.『国家の品格』を読み終えました

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  1.少し複雑な因数分解(その2)

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 たすきがけによる因数分解については、メルマガ第13号、第14号で説明しま
した。今回は、文字係数を含む、ちょっと面倒くさい「たすきがけ」の因数分
解の問題を取り上げてみます。


 ⇒ メルマガ第13号
 ⇒ メルマガ第14号


(例題1)2x^2 + 5xy + 2y^2 - 5x - 7y + 3

 まずは共通因数があるかどうかのチェックです。
  ⇒すべての項に共通する因数はありません

 次に因数分解の公式にあてはまるかどうかのチェックです。
  ⇒基本的な公式には当てはまりません。

 では、使われている文字のうち、最も次数の低い文字はどれでしょうか?
  ⇒使われているのはxとyですが、どちらも2次です。

 さて、どうしましょうか?前回にも書きましたが、同じ次数の場合もありえ
ます。その時には、どちらでも構いませんので、どちらかの文字について、整
理してみましょう。


 ここでは、xに着目し、xの次数の高い方から順に(これを「降べきの順」と
いいます)整理してみることにします。

   2x^2 + 5xy + 2y^2 - 5x - 7y + 3

  = 2x^2 + 5xy - 5x + 2y^2 - 7y + 3
      ~~~│~~~  ~~~~~~~│~~~~
        │xでくくる  │yについてたすきがけの因数分解
        ↓       ↓
  = 2x^2 + (5y - 5)x + (2y - 1)(y - 3) …(イ)


 さて、問題はここからです!この(イ)の式を、普通のたすきがけの問題と
同じ構造のものと見ることができるかどうかが鍵です。


 つまり、yについてたすきがけの因数分解をしている箇所がありますが、こ
こと同じことを、(イ)の式全体について考えてあげるのです。


 x^2の係数は2ですから、掛けて2になるのは?を考えます。⇒ 1と2です。
次に定数項です。今はxに着目していますから、xを含んでいない項が定数項と
いうことになります。つまり、(2y - 1)(y - 3) の部分が定数項です。掛けて
(2y - 1)(y - 3) になるのは、何と何でしょうか?組み合わせは2通り考えら
れます。

  2y -1 と y - 3 or 1 と (2y -1)(y - 3)

ここでxの係数を見ると、5y - 5 ですから、y^2の項はありません。したがっ
て定数項の組み合わせとして 1 と (2y -1)(y - 3) という組み合わせは考え
られません。


 ということは、たすきがけの組み合わせは、次の2通りだけとなります。

   1    y - 3     1   2y - 1
    \ /         \ /
     ×      or    ×
    / \         / \
   2   2y - 1     2    y - 3
  ────────    ────────

上の2つの組み合わせのうち、たすきがけをした結果が 5y - 5 になっている
ものが正しい組み合わせということになります。たすきがけのやり方は、係数
や定数が数のときと同じです。


【トライ1】

   1    y - 3 → 2y - 6 ─┐
    \ /           │
     ×            │
    / \           │
   2   2y - 1 → 2y - 1 ─┤
  ──────────────  │
             4y - 7 ←┘
             ~~~~~~ 残念!


【トライ2】

   1   2y - 1 → 4y - 2 ─┐
    \ /           │
     ×            │
    / \           │
   2    y - 3 →  y - 3 ─┤
  ──────────────  │
             5y - 5 ←┘
             ~~~~~~ OK!


 以上から、与えられた式を因数分解すると、次のようになります。

   2x^2 + 5xy + 2y^2 - 5x - 7y + 3

  = 2x^2 + 5xy - 5x + 2y^2 - 7y + 3

  = 2x^2 + (5y - 5)x + (2y - 1)(y - 3)

  = (x + 2y - 1)(2x + y - 3)
   ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 次号も、これと同じ型の因数分解を扱いますが、少しメンドウな形のものを
取り上げてみたいと思います。




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  2.『国家の品格』を読み終えました

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 第28号の編集後記で、藤原正彦先生の『国家の品格』を読んでいます、と書
きましたが、今朝の通勤電車で読み終えました。全編を通して読みごたえがあ
り、頷くところの多かった本でした。ここにその要点を書きたいのですが、私
の力量では、簡潔に要点だけをまとめることができません。なるべく多くの人
に、この本を読んでみてほしい、としか言えません。


 世界全体が不安定になっている現在、それを安定させる方向性を与えるのが、
日本が失いつつある「大切なもの」であると、この本の中で繰り返し述べられ
ています。日本が本来持っていた「高い精神性」であり、日本独自の「情緒」
です。「日本人には独創性がない」というような批判が妥当ではないというこ
とも、この本を読むことで納得されることと思います。むしろ、私たちは「日
本はダメな国だ」と思い込まされていたのではないでしょうか?そしてその思
い込みによって、本当にダメな国になってしまいそうな危機に面しています。


 最近、日本が他の国とは精神性において違うと強く思うようになったのは、
海外でのスポーツの試合においてです。たとえば、もうじき始まるサッカーの
ワールドカップですが、ホームでの試合とアウェーでの試合は、有利・不利が
大きく分かれます。しかし、どんなに自分の国を勝たせたいからといって、私
たち日本人は、審判やフィールドを自分達に有利になるようにしようなどとは
考えません。やはり、勝つからには「正々堂々と勝つ」ことを尊ぶ心があるよ
うに思います。それに比べて、他の国では、何をやっても勝てばそれでいい、
という風潮があるように感じられます。もちろん、これは私の感じ方であり、
日本びいきの間違った見方である可能性も大いにありますが(笑)


 いずれにしても、『国家の品格』を読んで、今まで自分自身の中でもやもや
していたことがはっきりしてきた感じがします。また、自分の間違いにも気づ
くことができました。何より、元気が出てきました!日本の良さを再認識し、
自信と誇りを取り戻していけたらいいな、と思っています。


国家の品格 (新潮新書)



─…─編集後記─…───…───…───…───…───…───…──

 『国家の品格』を読み終えたので、次は『ハリーポッターと謎のプリンス』
だ!といきたいのですが、試験問題を作らねばならないのです…。電車の中で
読むだけなら大丈夫かな?悩ましいところです(笑)

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