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第0009号 模範解答の読み方


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┃  数学マスターへの道〜少なく覚えてとことん使う〜        ┃
┃         第0009号 (2006/03/16)             ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆

 高校で数学を教えている現役教師が、数学の勉強の仕方、見方、考え方につ
いて、ちょっとしたヒントを毎週月・木にお届けします。


 合言葉は、

  ☆少なく覚えて、とことん使う!
  ☆センスは身につくもの!

です!


──Contents─────────────────────────────

 1.模範解答の読み方
 2.接線の方程式の別解(その3)

───────────────────────────────────


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  1.模範解答の読み方

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 教科書の解答例や問題集・参考書の模範解答を読んで、なるほど〜〜、とす
ぐに分かる人は、それなりに力のある人です。数学が苦手、という人は、解答
を見ても、「よく分からない!」と思うのではないかと思います。


 その原因の1つは、第0004号でも書きましたように、問題を解くために考え
る順序と、答案を書いていく順序が必ずしも一致しないということにあります。

 メルマガ第0004号バックナンバーはこちらです。
  → http://mathemaster.com/magback0004.htm

模範解答を書いている側は、先まで見通せているので、問題はありません。し
かし、学習している側は、先が見えない状態でそれを読むわけです。苦手であ
ればあるほど、先が見通すことができず、「何でここでこんな計算をしている
んだ?」とか「前とのつながりはどうなっているんだ?」といった疑問が湧い
て出てくるのです。ですから、たとえ解答を読むときであっても(「見る」で
はなく「読む」です)、問題を解いているような気持ちで、解答を読むように
してください。つまり、

 ・問題で与えられている条件から何が分かるか?
  (今考えているものから何が分かるか?)
 ・最終的な答えを求めるためには何が分かればいいか?
 ・与えられた条件のうち使っていないものはないか?

です。そして、「なぜこの式を使うのか?」「なぜこの計算をしているのか?」
といったことを常に意識するようにしてください。


 さて、模範解答を読んでもよく分からない原因の2つめは、模範解答は途中
の計算を省略することが多いということです。これは功罪両方あります。途中
を省略することによって見やすくなり、全体の流れがつかみやすくなる、これ
は「功」の方です。その反面、部分部分でのつながりが分かりにくくなる、解
答を「見る」だけに終わってしまいがちになる、という「罪」があります。そ
こで、この模範解答の効果的な読み方ですが、

 ・まず、細かい部分は抜きにして、全体の流れをつかむ
  (先行きの見通しを立てるということです)
 ・次に、省略されている計算を、自分で計算しながら埋めていく
  (頭の中ではなく、必ず紙に書いて計算してください)

上記のことを行うことで、

 ・問題を解くときの、流れ(ストーリー)がつかめる
 ・計算練習になる
 ・全体の流れと部分的な計算の両方を把握できる

といった、メリットがあります。もちろん、「分かった!」という手ごたえが
あるでしょうから、自信にもつながります。


 以上述べてきたことをまとめますと、模範解答を読むときの心構えは

  ☆問題を考えるときと同じような気持ちで読む
  ☆「なぜ?」を大事にする
  ☆省略してある計算は自分で計算して埋める
  ☆全体の流れと部分的な計算の両方を意識する

です。ぜひ、試してみてください。




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  2.接線の方程式の別解(その3)

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 今回は、下の接線の方程式を求める問題の別解の解決編です。

┌──────────────────────────────────┐
│                                  │
│ 問 点(-3,5)から放物線y=x^2-4xに引いた接線の方程式を求めなさい。 │
│                                  │
└──────────────────────────────────┘

 前回までのおさらいを簡単にします。

  直線 y=mx+3m+5 ………(イ) が
  放物線 y=x^2-4x ………(ロ) の接線となるのは、
  (イ)と(ロ)を連立させて作った
  x^2-(4+m)x-3m-5=0 ………(ニ) という方程式の解が
  1つだけのときである。(第0007号)

  方程式(ニ)の解がただ1つとなるのは、
  判別式 D={-(4+m)}^2-4・1・(-3m-5) ………(ホ) の値が
  0のときである。
  (ホ)=0 という方程式を解いてmの値を求め、
  それを(イ)に代入すると接線の方程式が求まる。(第0008号)

今回は、方程式 (ホ)=0 を実際に解いて、接線の方程式を求めます。


  {-(4+m)}^2-4・1・(-3m-5)=0
    ↓    ☆展開します。符号に注意!
  16+8m+m^2+12m+20=0
    ↓    ☆同類項をまとめ、降べきの順に並べます。
  m^2+20m+36=0
    ↓    ☆因数分解します。
  (m+2)(m+18)=0
    ↓    ☆m+2=0 と m+18=0 を解きます。
  m=-2,-18


 これで、mの値が求められましたので、この値を(イ)に代入します。

 m=-2 のとき、
  y=-2x+3・(-2)+5
   =-2x-6+5
   =-2x-1

 m=-18 のとき、
  y=-18x+3・(-18)+5
   =-18x-54+5
   =-18x-49

となりますので、求める接線の方程式は、

  y=-2x-1 と y=-18x-49

です。


 当たり前の話ですが、これは第0006号で求めた結果と同じです。メルマガ第
0006号で確認してみてください。第0006号を受け取っていない方は、私のブロ
グにバックナンバーを載せていますので、そちらをご覧ください。

  → http://mathemaster.com/magback0006.htm


 これで、1つの問題に対して2つの解き方を示したことになります。この問
題が今までできなかった人は、もう一度自分で解いてみてください。そして、
できれば両方の方法を試してみてください。その際には、「自分がやっている
計算が何を求めようとしているのか」や「全体の流れ」を把握しながら、解く
ようにしてみましょう!




─…─編集後記─…───…───…───…───…───…───…──

 放物線に対して接線を引く問題を、2つの方法で解いてみましたが、いかが
でしたでしょうか?別解の方法は「2次式で表される曲線」という、やや狭い
範囲で使う方法ですが、逆に言えば「2次式で表される曲線」であれば使える
わけですから、円でも楕円でも同じ方法で接線の方程式を求めることができま
す。(場合によっては、計算がかなり大変になることもありますが、とりあえ
ず解けます)そして大抵は、1つの問題に対して複数の解き方がありますので、
いろいろな角度から問題を見るようにして欲しいと思います。

─…───…───…───…───…───…───…───…───…─

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