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第0004号 間違った勉強法にご用心!(その1)


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┃  数学マスターへの道〜少なく覚えてとことん使う〜        ┃
┃         第0004号 (2006/02/23)             ┃
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 高校で数学を教えている現役教師が、数学の勉強の仕方、見方、考え方につ
いてちょっとしたヒントを毎週お届けします。


 合言葉は、

  ☆少なく覚えて、とことん使う!
  ☆センスは身につくもの!

です!



──Contents─────────────────────────────

 1.間違った勉強法にご用心!(その1)
 2.数学の方言(その1)

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  1.間違った勉強法にご用心!(その1)

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 教科書や問題集に模範解答が載っていますよね。あなたは、それを真似して
それと同じ順序で問題を解こうとしていませんか?そうやっているけど、別に
問題ないよ、というのであればいいのですが、念のため次の項目に対してチェ
ックしてみてください。

  □教科書や問題集と全く同じ問題は解けるけれど、少し条件や問題文が変
   わると解けない。

  □解答を見ながらなら解けるけれど、自分で解こうと思うと、どうしてい
   いか分からなくなる。

  □家で解いているときはできたのに、試験のときにどうしていいか分から
   なくなって、パニックになってしまった。

  □実力テストや模擬試験などの応用問題になると、何をしていいのか分か
   らず、全く手をつけることができない。

さて、いかがでしょうか?複数の項目に該当したら、勉強方法を見直す必要が
あるかもしれません。全く勉強していない人は、これ以前の問題ですから、ま
ずは勉強を始めてください。(何を勉強すればいいのか分からないという人に
は、またあらためて勉強法を伝授します)


 まず、模範解答を見て、それを真似しながら(解き方を一つ一つ確認しなが
ら)解いていくのは、ちょうど補助輪のついた自転車に乗っているのと同じで
す。補助輪付きの自転車にいくら乗っていても、普通の自転車に乗れるように
はなりません。中にはそれでも乗れるようになる人もいるかもしれませんが、
そういう人はごく少数でしょう。普通は、補助輪を外して乗る練習をしますよ
ね?同じことを数学の勉強に当てはめてみると、

  解答を見ないで解く練習をしてみる

ということになります。分からなくなったら、確認のために時々解答を見ると
いう程度にするのです。これで随分違ってくるとは思いますが、これだけでは
上記の問題がすべて解決とはなりません。実は、もっと本質的な問題が残って
いるのです。


 それは何かと言いますと、

  「解答を書いていく」順序と「問題を解くために考える」順序とは必ずし
  も一致しない

ということです。(これが大事なのです!)「解答」とは問題を解くために考
えた多くの事柄や計算を、最終的に整理してキレイにまとめあげたものなので
す。つまり「再構成」されてしまっているんです!だから、それをただ真似し
ていくだけでは、「考える方法」が身につかないのです。


 数学を教える人がよく言うのは、

  ・習った知識をそのまま当てはめようとしていてはいけない
  ・応用力が大切だ
  ・頭を使って自分で考えなければいけない

といったことでしょう。確かにこれらは大切ですし、目標にすべきことです。
しかし、そのために具体的に何をすればいいのか?という指針を与えてくれる
人は少ないように思います。ただ、考えろ、頭を使え、応用しろ、と言われて
も、どう考えていいのか分からずに苦しんでいる人にとっては、全く役に立た
ない言葉です。泳げない人に、泳ぎ方を教えずに、泳げ!頑張って泳げ!と言
っているようなものです。(このように書けばバカバカしいことを言っている
と思いますが、水泳に限らず、多くの場面で実際にそういう指導をしている教
員の何と多いことか…)


 さて、問題を解くためには、どう考えればよいのでしょうか?まず、話を簡
単にするために、前提として、

  与えられた問題を解くために必要な知識や計算技術は身につけている

とします。その上で、次のように考えていきます。

  ・問題で与えられている条件から何が分かるか?
  ・最終的な答えを求めるためには何が分かればいいか?
  ・与えられた条件のうち使っていないものはないか?
  ・持っている知識の中で使えそうなものはどれか?
  ・与えられた問題と似た問題を見たことはないか?

基本的な問題を解く練習をしているときには、特に最初の二つを意識してやる
ようにしましょう。


 流れとしては次のような感じになります。

  与えられた条件
     ↓
  条件から何が求まるか?
     ↓
    ☆☆☆  ←これがつながれば解ける!!
     ↑
  何が分かれば最終的な答えが出るか?
     ↑
  求めたい最終的な答え

このように考えていって、つながったときに「解けた!」となるのです。この
ステップが少ない問題が易しい問題です。時には、条件からすぐに求められる
ことが、そのまま最終的な答えになることもあります。そして、ステップが多
いものが難しい問題です。それに加えて、思いがけない知識やアイデアが必要
であるとか、計算が複雑であるというような要素が加わって、「難問」が出来
上がるのです。


 上のように考えて出た答えを、与えられた条件の方から書いていったものが
「答案」です。考える順序と答案として書く順序が一致していませんよね?こ
のあたりを理解していないと、いくら問題を解く練習をしても他の問題への応
用がきかないということになります。できるようになる人は、知らず知らずの
うちに、こういったことを考えたりするものですが、コツを教わって、意識し
てやっていく方が上達が早いのは、運動や他の技術と同様です。


 これから問題を解く練習をするときには、

  一、条件から分かることは何か?
  一、何が分かれば答えが求まるか?

を考えながらやってみてください。具体的な問題での考え方は、次回お伝えす
ることにします。




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  2.数学の方言(その1)

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 数学には独特の言いまわしがあって、初めて聞く人にとっては、「ん?」と
思うようなものがあります。これを私は数学の方言と名付けています。数学世
界に住むティーチャーたちは、自分たちが方言を使っていることに気づかない
ことが多いのです。ティーチャーたちの間ではあまりに普通に使ってしまって
いるので、数学世界の方言に慣れていない人には、とっても分かりづらい表現
があることに気付かないのです。


 今日はその中の第一弾として、中学の数学で出てくる方言をご紹介します。
ひょっとしたら、今では慣れてしまって違和感を感じなくなっているかもしれ
ませんが、よくよく考えると変なんですよね。

 ┌─────────┐
 │ x=●を代入する │
 └─────────┘

「x=●を代入する?」え?式に「x=●」を入れるの?…違いますよね。これは
翻訳をすると、「文字xの値は●と等しいから、xの代わりに●という値を入れ
る」ということです。「代」わりに「入」れるから、「代入」なんですよね。
何気なく使っていますが、そのままストレートに考えようとすると、ちょっと
変ですよね。


 言葉遣いに慣れてきて、何を言っているかが分かるようになれば問題はない
のですが、場合によっては、こういった言葉遣いが理解の妨げになることもあ
ります。高校の数学でも、特殊な表現のために、何を言おうとしているのかが
分からず、困ってしまっているというケースもあります。これからこのメルマ
ガで、そういう言葉の壁も取り払っていきたいと思います。リクエストなども
お受けしたいと思います。すべてについてお答えできるかどうか分かりません
が、ご質問・ご感想など頂けたら幸いです。




─…─編集後記─…───…───…───…───…───…───…──

 実は、今回載せようと思っていた記事があったのですが、間違いがみつかり、
慌てて取りやめにしました。一度は配送予約までしていたのですが、もう一度
見直したら、大いなる勘違いに気がつきました(>_<)発送する前に気がつ
いて良かったな〜〜、としみじみ思いました。

 私たち教員でも、問題を取り違えたり、計算ミスをしたりすることはありま
す。ですから、数学の勉強をしている真っ最中のみなさんは、間違えた所から
学べばいいんだ、と考えるようにしてください。そして、間違いを恐れずにど
んどん勉強に励んでください!

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