<< 前の記事へ      目次へ戻る      次の記事へ >>

第0006号 問題の考え方(接線の方程式・その2)


☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃  数学マスターへの道〜少なく覚えてとことん使う〜        ┃
┃         第0006号 (2006/03/06)             ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆

 高校で数学を教えている現役教師が、数学の勉強の仕方、見方、考え方につ
いて、ちょっとしたヒントを毎週月・木にお届けします。


 合言葉は、

  ☆少なく覚えて、とことん使う!
  ☆センスは身につくもの!

です!


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

  問題の考え方(接線の方程式・その2)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 前号では下のような接線の方程式を求める問題の解き方について、大まかな
流れを考えました。

┌──────────────────────────────────┐
│                                  │
│ 問 点(-3,5)から放物線y=x^2-4xに引いた接線の方程式を求めなさい。 │
│                                  │
└──────────────────────────────────┘

今回はそれを実際に計算してみようということだったのですが、まずは必要と
なる技や公式を確認しておきたいと思います。


 与えられた関数から、ある点(仮にAとしておきましょう)における微分係
数を求めるには、次のようにします。

  (1) 与えられた関数を微分して導関数を求める
  (2) (1)で得られた導関数に点Aのx座標を代入する

2次式や3次式などで表される関数を微分するための基本公式は、次の3つを
覚えるように生徒に言っています。

  (1) y=k(kは定数)─(微分)→ y'=0
  (2) y=ax     ─(微分)→ y'=a
  (3) y=x^n     ─(微分)→ y'=nx^(n-1)

通常(3)は(2)に含まれるものとして書いてありますが、別枠で覚えておいた方
が実際に微分するときには早く判断ができますので、このようにしています。
(少なく覚えるの趣旨に反するようですが…苦笑)ただし、公式として覚える
のは最初のうちだけで、最終的には余り考えずに、自然にスラスラとできるよ
うになるまで練習してください。特に(3)の式は、言葉で言い換えて、

  指数を係数として前に掛けて、次数を一つ下げる

と覚えるようにします。式を覚えて当てはめるのではなく、どのように書いて
いくか、という操作の方法を言葉にして覚えるのです。そうすると、繰り返し
使っていくうちに、一々言葉を思い出さなくても、身体が自然と動くようにな
ります。


 あと2つ技を覚えておかなければなりません。それは、「係数は微分してか
ら掛ければよい」と「足し算や引き算でつながっている項は、それぞれの項ご
とに微分することができる」というものです。これは、教科書などでは「微分
の性質」としてまとめられています。なぜそれが成り立つのか、という説明は
ここでは省略します。


 今回の問題を例に説明します。

  y=x^2-4x を微分するとき、x^2 と -4x はそれぞれ別に微分して、あとか
  らまた合体させれば良いのです。

つまり、

   ┌─1を引く─┐
   ↑      ↓指数が2ですから1を引いて x^1 すなわち x
  x^2 ─(微分)→ 2x
   ↓     ↑指数が2ですから、それを前に係数として掛けます
   └─────┘

  -4x ─(微分)→ -4
  ↓       ↑●xという式を微分すると、係数の●だけになります
  └───────┘

これらを最後に合体させて、

  y'=2x-4 ………(*)

となるのです。


 まずは、微分ができないとどうにも進めませんので、くどいとは思いました
が、説明しました。微分して得られた(*)の式に、接点のx座標を代入して計
算すると、その点における微分係数が求まります。


 次に接線の方程式を求めるために、直線の方程式を求める公式を使います。
これは、中学校で習った方法でももちろんできますが、この公式を覚えておけ
ば、多少複雑な計算になってもできますし、何より思考の流れを止めずに、直
線の方程式を求める計算に入れますので、脳力の節約にもなります。そのあた
りの詳しい話は別の機会に譲ります。(ナンだか「別の機会に譲る」というセ
リフを何度も書いている気がしますが…苦笑)


 さて、直線の方程式を求める公式ですが、苦手な人は、基本公式として次の
公式1つをしっかりマスターしてください。これは、式を覚えておいて、そこ
に数値などを当てはめて計算するタイプの公式です。

 ┌───────────────────────┐
 │ 傾きがmで、点(○,△)を通る直線の方程式は、 │
 │   y-△=m(x-○)              │
 └───────────────────────┘

そして、補足として「直線の傾きとその直線が通る点の座標の一つが分かれば
直線の方程式は求められる」ということも覚えておいてください。キーワード
は、「傾き」と「通る点の座標」です。普通、教科書では点の座標を(○,△)
とはしません。ここでは、文字にあまり囚われてほしくなかったので、あえて
○と△にしました。私は、普段の授業でこの公式を使うときには、「yマイナ
ス通る点のy座標イコール、傾き掛けるかっこxマイナス通る点のx座標」と言
いながら、黒板に書くようにしています。(文字で書くと読みづらいですね…)


 さて、本題に入ります。今回も長くなってしまいますが、ご容赦ください。
前回、接点のx座標を何か文字でおいて、それを使って計算していこう、とい
う話になっていたと思います。


 そこで、まずは接点のx座標をaとおくことにしましょう。そうすると、接点
のy座標は、y=x^2-4xに接点のx座標aを代入して、

  y=a^2-4a

となります。したがって、接点の座標は、

  (a , a^2-4a) ………(イ)
   ↑   ↑
  x座標  └y座標

となります。


 次に、接線の傾きですが、さきほど求めたように、y=x^2-4xを微分すると、


  y'=2x-4


となりますから、これに接点のx座標aを代入して、

  y'=2a-4 ………(ロ)

となります。(イ)、(ロ)から求めようとしている接線は、

  傾きが 2a-4 で、点(a , a^2-4a)を通る直線

ということになりますので、さきほどの直線の方程式を求める公式に当てはめ
て、

  y-(a^2-4a)=(2a-4)(x-a)
    ~~↑~~ ~~↑~~  ↑
    y座標  傾き x座標

となります。左辺の -(a^2-4a) を右辺に移項して計算すると、次のようにな
ります。

  y=(2a-4)x-a(2a-4)+a^2-4a
   =(2a-4)x-2a^2+4a+a^2-4a
   =(2a-4)x-a^2 ………(ハ)

ここまでが、前回の

┌──────────────────────────────┐
│ 放物線の方程式に接点のx座標を代入し、接点のy座標を求める │
│      ↓                       │
│ 放物線の方程式を微分する(導関数を求める)        │
│      ↓                       │
│ 導関数に接点のx座標を代入し接線の傾きを求める       │
│      ↓                       │
│ 接点の座標と接線の傾きから、接線の方程式を求める     │
└──────────────────────────────┘

を実行してみた結果です。文字aを含んだ計算なので、難しく感じる人もいる
かもしれませんが、やっていることは係数が数のときと同じです。文字が入っ
ていても構わずにやる!そこが大事です。


 問題で出されている条件を全て使っているなら、ここでおしまいとなるので
すが、どうでしょうか?最初の問題をもう一度見て、使っていない条件がある
かどうか考えてください。そうですね。「点(-3,5)から接線を引く」という条
件を使っていませんね。ただ、一度使った条件をもう一度使ったり、余分な条
件がついているということもないとは言えませんので、注意してください。


 さあ、ゴールにだいぶ近づいてきました。「点(-3,5)から接線を引く」とい
うことは、この接線は「点(-3,5)を通る」ということになります。そこで、こ
の点の座標を、さきほどの(ハ)の式に代入してみます。そうすると、

  5=-3(2a-4)-a^2 ………(ヘ)

となり、これはaについての方程式ですから、それを解けばいいのです。ここ
で、「解けばいいのです」と簡単に書きましたが、それができなかったらどう
なるでしょうか?ここまでやってきたことが水の泡になってしまいますね。で
すから、問題を解くためのアイディアも大事ですし、同時に計算や方程式・不
等式を解く技術も大事だということになります。もちろん公式や解法について
の知識も必要です。そういった計算や方程式・不等式を解くことの重要性を意
識して練習してみてください。面倒くさいと思っていた計算練習が、気持ちの
上でもずいぶん違うと思いますよ。


 本題に戻ります。(ヘ)の方程式を解いてみましょう。

  5=-3(2a-4)-a^2
  5=-6a+12-a^2
  a^2+6a-7=0
  (a-1)(a+7)=0
  a=1,-7 ………(ト)

いよいよ大詰めです。(ト)のaの値を(ハ)の式のaに代入します!そうすると、

 a=1 のとき、
  y=(2・1-4)x-1^2
   =-2x-1

 a=-7 のとき、
  y={2・(-7)-4}x-(-7)^2
   =-18x-49

となりますので、求めようとしていた接線の方程式は、

  y=-2x-1 と y=-18x-49

です。ようやく答えまでたどり着きました。お疲れ様でした!m(_ _)m




─…─編集後記─…───…───…───…───…───…───…──

 今回は問題解決編ということもあって、相当に長くなってしまいました。実
は、途中で終わりにして「次回へ続く」にしようかな、とも考えました。しか
し、あまり勿体つけても仕方がありませんし、何より1つの問題を3回に分け
て送信するのは、間が空き過ぎるだろうと思い、無理やり1回におさめてしま
いました。そのせいで、かなり長いメルマガになってしまいました。最後まで
読んでくださった方、本当にありがとうございます。感想やご意見、ご要望な
どありましたら下記メールアドレスにお送りください。次回は、接線の方程式
を求める今回の問題の、別の解き方を紹介します。では、また木曜日にお会い
しましょう。

─…───…───…───…───…───…───…───…───…─

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 現役高校数学教師が送る「数学マスターへの道」(毎週月曜・木曜日発行)
 発行システム:『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/
 配信中止はこちらから→ http://www.mag2.com/m/0000184672.html
 ご意見・ご感想などはこちらへお願いします。
 → E-Mail math_master@hotmail.co.jp
 → BLOG  http://sora.mathemaster.com/
 バックナンバーはこちら
 → http://mathemaster.com/magback_index.htm
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


<< 前の記事へ      目次へ戻る      次の記事へ >>