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第0051号 対数の公式(底の変換公式)

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┃  数学マスターへの道〜少なく覚えてとことん使う〜        ┃
┃         第0051号 (2007/01/26)             ┃
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 高校で数学を教えている現役教師が、数学の勉強の仕方、問題の解き方、考
え方についてちょっとしたヒントを毎週お届けします。

 先日行われたセンター試験の平均点の中間集計が発表されました。ご存知の
方も多いとは思いますが、数学I・Aは54.26点、数学II・Bは51.20点でした。
昨年に比べると、やや難化の傾向が見られます。特に数学II・Bでは、相当の
計算量が要求されるので、大変だったのではないかと思います。受験生は、こ
れから行われる私大および国公立の2次に向けて、最後の調整を行うことにな
ると思います。最後まであきらめずに、がんばってください。そして、体調管
理も実力のうちですから、風邪などひかないように気をつけてください!


 初めて読む方もいるかと思いますので、このメルマガでの記号の書き方につ
いての約束事を2、3書いておくことにします。


 ☆2乗、3乗などの表し方は、^2、^3とします。
 (例)xの2乗 ⇒ x^2

 ☆添え字は_1、_2といった形で書きます。
 (例)数列の初項、第2項などは ⇒ a_1、a_2
    対数の底a ⇒ log_a x



──Contents─────────────────────────────

 1.対数の公式(底の変換公式)
 2.前回の練習問題の解答

───────────────────────────────────


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  1.対数の公式(底の変換公式)

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 今年度のセンター試験でも出されましたが、対数の公式の中でも最後の大技
である「底の変換公式」の紹介をしたいと思います。


【底の変換公式】
┌──────────────┐
│        log_c b   │
│  log_a b = ─────  │
│        log_c a   │
└──────────────┘


 まず、これは一体何をするための公式かと言いますと、その名の通り、対数
の底を変換する公式なのです!・・・って、そのまんまですね(^^; 対数の
計算で合体による計算をするときに、実は条件があったのです。それについて
あまり詳しく触れていなかったので、意識していなかったかもしれません。こ
こで再度、合体で使うときの公式を書きます。


  log_a x + log_a y = log_a xy

                x
  log_a x - log_a y = log_a ──
                y


この2つの公式を使って合体させるための条件は「底が同じである」ことです。

  え?気付いてました?さすがです(^^)

つまり、log_a x と log_a y という底が等しい2つの対数の足し算や引き算
についてのみ、合体させられるのです。


 そこで対数の計算において、底が異なるものがある場合には、「底を揃える
(=等しくする)」ということが大切なアイデアの1つになってくるのです。
これは、対数の方程式や不等式を解くときにも必要になる考え方です。しかし
底を揃えるといっても、勝手に書き換えたらマズイですよね(笑)


 そんなときに使えるのが、上で挙げた「底の変換公式」なのです!この公式
を使えば、底を好きな値に変えることができるのです。もちろん、好きな値と
言っても、「底」ですから、1以外の正の数ということになりますが…。


 では、底の変換公式の証明をしてみましょう。

  log_a b = s とおきます。

対数の定義より、

  b = a^s

となります。この両辺に対して、1でないある正の数cを底とした対数の値を考
えると、

  log_c b = log_c a^s

となります。ここで、右辺をさらに変形して、

  log_c b = s × log_c a

とし、これをsについて解きます。

     log_c b
  s = ─────
     log_c a

最後の仕上げとして、sを元々の log_a b に戻してやると、

        log_c b
  log_a b = ─────
        log_c a

という底の変換公式の出来上がりです。


 次回は底の変換公式を用いた計算問題を扱いますので、次回までにこの公式
を覚えておいてください。そのときに、できたら自分なりの覚え方を工夫して
みてください。覚え方はいろいろあると思いますが、いくつかのポイントにつ
いてはメルマガ第0003号に書きましたので、参考にしてください。

 ⇒ 第0003号 http://mathemaster.com/magback0003.htm




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  2.前回の練習問題の解答

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【練習問題】次の対数の計算をしてください。

 (1) 2log_5 180 - 4log_5 30

〔解答1〕方針(A)「合体」

   2log_5 180 - 4log_5 30

  = 2log_5 (2^2 × 3^2 × 5) - 4log_5 (2 × 3 × 5)

  = log_5 (2^2 × 3^2 × 5)^2 - log_5 (2 × 3 × 5)^4

  = log_5 (2^4 × 3^4 × 5^2) - log_5 (2^4 × 3^4 × 5^4)

      2^4 × 3^4 × 5^2
  = log_5 ─────────
      2^4 × 3^4 × 5^4

       1
  = log_5 ──  ─┐
       5^2   │この部分がよく分からない人は第0048号を
           │お読みください
  = log_5 5^(-2) ←┘

  = -2
   ~~~~

〔解答2〕方針(B)「分解」

   2log_5 180 - 4log_5 30

  = 2log_5 (2^2 × 3^2 × 5) - 4log_5 (2 × 3 × 5)

  = 2(log_5 2^2 + log_5 3^2 + log_5 5)     ┐
                         ├長いので2行に分割
         - 4(log_5 2 + log_5 3 + log_5 5) ┘

  = 2(2log_5 2 + 2log_5 3 + 1) - 4(log_5 2 + log_5 3 + 1)

  = 4log_5 2 + 4log_5 3 + 2 - 4log_5 2 - 4log_5 3 - 4

  = -2
   ~~~~


              4
 (2) 3log_2 12 + 2log_2 ── - log_2 24
              3

〔解答1〕方針(A)「合体」

              4
   3log_2 12 + 2log_2 ── - log_2 24
              3

                 2^2
  = 3log_2 (2^2 × 3) + 2log_2 ── - log_2 (2^3 × 3)
                  3

                 (2^2)^2
  = log_2 (2^2 × 3)^3 + log_2 ──── - log_2 (2^3 × 3)
                  3^2

                 2^4
  = log_2 (2^6 × 3^3) + log_2 ── - log_2 (2^3 × 3)
                 3^2

              2^4    1
  = log_2 (2^6 × 3^3 × ── × ────)
              3^2  2^3 × 3

  = log_2 2^7

  = 7
   ~~~

〔解答2〕方針(B)「分解」

              4
   3log_2 12 + 2log_2 ── - log_2 24
              3

                 2^2
  = 3log_2 (2^2 × 3) + 2log_2 ── - log_2 (2^3 × 3)
                  3

  = 3(log_2 2^2 + log_2 3) + 2(log_2 2^2 - log_2 3) ┐
                            ├ここも2行に
                - (log_2 2^3 + log_2 3)┘

  = 3(2 + log_2 3) + 2(2 - log_2 3) - (3 + log_2 3)

  = 6 + 3log_2 3 + 4 - 2log_2 3 - 3 - log_2 3
                   ↑
  = 7              符号注意!
   ~~~


 できましたか?だんだん計算が複雑になってきましたので大変だと思います
が、できなかったり、間違えたりしたら、どこでつまづいたのかを見極めるよ
うにしてください。そこからスタートするのですから!間違えることは決して
恥ずかしいことではありません。間違えたり、できなかったりするからこそ、
できるようになった時の喜びは大きいものです。ぜひ頑張ってください!




─…─編集後記─…───…───…───…───…───…───…──

 前号で紹介した『虹色★ロケット』をまた観ました。今度は職場の同僚を誘
って観てきたのです。劇場を出た後に開口一番、「すごいね」と言っていまし
た。映画が好きで、私など足元が及ばないくらい沢山の映画を観ている方なの
ですが、「よく出来てる。面白い!」と言っていました。全国の中で、東京の
下北沢でしか上映していませんので、場所的に行くのが困難な方も多いかと思
いますが、もし行けるようであればぜひ一度観ていただけたら、と思います。
とりあえず、2月下旬までは上映する予定だそうです。

─…───…───…───…───…───…───…───…───…─

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