<< 前の記事へ      目次へ戻る      次の記事へ >>

第0003号 公式はどうやって覚える?


☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃  数学マスターへの道〜少なく覚えてとことん使う〜        ┃
┃         第0003号 (2006/02/16)             ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆

 高校で数学を教えている現役教師が、数学の勉強の仕方、見方、考え方につ
いてちょっとしたヒントを毎週お届けします。

 大学でも高校でも一般入試が始まっています。また、そろそろ3学期の期末
試験(学年末試験とも言う?)も始まる頃だと思います。数学で苦しんでいる
人を、その苦しさから少しでも解放してあげることができれば、と思っていま
す。Let's enjoy mathematics!


──Contents─────────────────────────────

 1.公式はどうやって覚える?
 2.正弦定理・余弦定理の場合

───────────────────────────────────


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

  1.公式はどうやって覚える?

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 公式を覚えるときに、ひたすら口で唱えたり、英単語や漢字のように紙に書
いて覚えようとしたりしていませんか?ある部分では、それも必要ですが、そ
れだけではうまく覚えることはできません。仮に覚えたとしても、すぐに忘れ
たり、うまく使えなかったりしているのではないかと思います。そこで、公式
の覚え方のコツについて、ちょっとしたヒントを提供したいと思います。


 まず、最初に断っておきますが、全ての人に共通の「完璧にうまい覚え方」
なんてないと私は考えています。もちろん、同じ人間ですからある程度の共通
性はあると思いますが、人によって覚え方にも得意・不得意があるのです。つ
まり、ある人にとって覚えやすい方法が、あなたにとって覚えやすい方法とは
限らないのです。ちょうど勉強の仕方と同じですね。

  じゃ、覚えるコツなんかないんじゃないの?

と思うかもしれませんが、そうでもありません。人によって覚えやすい方法が
違うということを意識した上で、自分に合った方法にうまく変えていけばいい
のです。他の人がこれはいいよ、と言ったものをそのままやろうとしてもうま
くいかないのです。自分に合わせてアレンジすることを忘れないで下さい。


 それでは、公式の覚え方のコツですが、次に挙げるものを組み合わせて覚え
ていけばいいのです。それらをどう組み合わせるか、どれをメインにするかは、
公式によっても、人によっても異なりますので、その辺は自分でも考えてみて
ください。

  一、意味を考える
  一、規則性を見つける
  一、言葉で言い換えたり、言葉を手がかりにしたりする
  一、映像的な特徴をつかむ
  一、導く過程の大まかな流れをつかむ
  一、口で唱える
  一、紙に書けるように練習する

複数の方向から公式を覚えようとすることで、記憶が強化され、覚えやすくす
ると同時に、忘れにくくするという効果があります。面倒くさいな〜〜、と思
うかもしれませんが、ぜひ試してみてください。次の2.で正弦定理・余弦定
理を例として、具体的にどうすればいいのかを書いていきます。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

  2.正弦定理・余弦定理の場合

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 数学Iで学習する三角比。2次関数・2次不等式に続く、高校数学の大きな
関門の一つです。三角比そのものについては、別の機会に譲ることにしまして、
ここでは正弦定理と余弦定理の式を覚えることにしぼって、書いていきます。


 まず、正弦定理・余弦定理とは、次のようなものです。

【正弦定理】
   a     b     c
  ─── = ─── = ─── = 2R (Rは外接円の半径)
  sin A  sin B  sin C

【余弦定理】
  a^2=b^2+c^2−2bc cosA
  b^2=c^2+a^2−2ca cosB
  c^2=a^2+b^2−2ab cosC

正直に言います。私はこの公式(定理)が大っキライでした!(笑)大体が、
正弦・余弦という言葉自体が受け入れにくいものでした。はっきり言って、何
じゃそりゃ?という感じでした。おっと、愚痴を言うところではありませんね
(笑)失礼しました。


 さて、この式の覚え方ですが、正弦定理・余弦定理に共通する部分から書い
ていきます。まずは、「正弦・余弦」という言葉です。先ほど、受け入れにく
いと書きましたが、この言葉を手がかりにして覚えていくことを考えます。そ
の際、意味については深く考えないことにします。というか、本来の漢字の大
切な役割である、一つ一つの文字の意味を、ここでは考えないことにするので
す。つまり、

  「正弦」の「正」とか「弦」とかの意味は気にしない
  「余弦」の「余」とか「弦」とかの意味は気にしない

ということです。そこで、教科書に出ている順番、そして世間でよく言われる
順番で「正弦定理・余弦定理」という言葉をセットで覚えます。この段階では
中味は知らなくたってイイのです。とにかく「正弦定理・余弦定理」という言
葉を、呪文のように覚えましょう。それと併せて、「sin・cos(サインコサイ
ン)」もこの順番で覚えましょう。そうすると、覚えた順番で、正弦=sin、
余弦=cos というつながりができると思います。


 次に、これは数学の中でのローカルルールなのですが、

  角Aの向かいの辺の長さをa、
  角Bの向かいの辺の長さをb、
  角Cの向かいの辺の長さをcとする

このように、三角形の角とその向かい側の辺の長さを組として考えます。その
おかげで、式に規則性が生まれてきます。


☆★☆正弦定理の覚え方についてのポイント☆★☆

  一、キーワードは「分数」「外接円」 ←言葉を手がかり
  一、△=△=△=2R …(1)←映像的な特徴

これらを組み合わせます。3つの△が=でつながっているということと、「分
数」というキーワードから、

  ─── = ─── = ───  …(2)

を作ります。そして、△という映像的なイメージと言葉から、

  下(分母)の方が文字が多く、上(分子)の方が文字が少ない
  「正弦」定理だから「sin」を使う

を組み合わせて、

   a  ←┐
  ───  ├Aとaがセット、Bとb、Cとcも同様  …(3)
  sin A ←┘

と、なります。上の式、△っぽく見えますよね?(笑)少なくとも、▽には見
えないと思います。分母と分子のどちらにsin Aがくるのかは、大きな問題で
すから、この△のイメージを忘れずに覚えましょう!そして、最後に(1)〜
(3)を融合させて、

   a     b     c
  ─── = ─── = ─── = 2R
  sin A  sin B  sin C

これで正弦定理の式の出来上がりです。最後に付け加えるとしたら、Rって何
だっけ?と考えて、キーワードの「外接円」を思い出します。円の半径を表す
ときには、rかRのどちらかを使う、という数学のローカルルールがあります
ので、それを組み合わせて「Rは外接円の半径」となります。ちなみに、直径
を表す定番の文字はありませんので、基本は「半径」と覚えておけばいいでし
ょう。


☆★☆余弦定理の覚え方についてのポイント☆★☆

 教科書でも参考書でも、大抵は上記のように3つの式を並べて書いてありま
す。ですが、これらはどれも同じ規則性を持っていますので、その規則性を使
えば覚える式は一つで済みます。


 まず、ターゲットにする角(または辺)を決めて、その向かいの辺(または
角)とセットにします。たとえば、ターゲットを角Bに決めれば、その向かい
の辺はbとなりますので、Bとbという組み合わせを作るのです。

【注意!】ここで、正弦定理のときのように、単なる文字だけでAとa、Bと
bというような組み合わせを作らないようにすることが大事です。余弦定理で
は、三角形の図と対応させながら覚えていく方が、使うときに便利です。

さて、ターゲットの辺から式を作り始めます。この際に補助的なイメージとし
て、三平方の定理を利用するといいでしょう。
まず、

  b^2=

と書きます。次に、使っていない文字は何か?と考えます。もちろん、a、b、
cの中で、です。そうすると、bからスタートしたのですから、残りはaとc
です。それらと三平方の定理のイメージを使って、

  b^2=c^2+a^2  …(4)

とします。ただ、ここでおしまいにすると、これは三平方の定理と全く同じで
すからダメです。三平方の定理は、直角三角形のときだけ使える式です。ここ
では、全ての三角形を対象にしていますので、補正しなければなりません。そ
こで、(4)の式の右辺の最後に、補正のための式を付け加えます。

  ┌─セットになっている角B─┐
  ↑             ↓
  b^2=c^2+a^2−2ca cosB
     ↓  ↓ ~~~~↑↑~~↑~~
     │  └───┼┘ └─「余弦」定理だから「cos」
     └──────┘

どの式も、これと同じ構造になっていますので、一つ作れるようになれば、あ
とは楽勝です!


 ちなみに、私は生徒たちに、A、B、C、a、b、cといった文字ではなく
次のような式で覚えるように言っています。

 ┌───────────────────────────┐
 │ 目標とする辺の長さをx、その向かいの角の大きさをθ、│
 │ 残りの辺の長さをy、zとして、           │
 │                           │
 │  x^2=y^2+z^2−2yz cosθ          │
 └───────────────────────────┘

この覚え方の利点は、式の覚え方を利用して、問題文や図からすぐに式が作れ
るところです。つまり、いったん式を書いて当てはめる数値などを考えるので
はなく、直接式を立てていくのです。そうすると、考えるステップが一つ省略
できますので、その分頭を効率良く使うことができます。




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 現役高校数学教師が送る「数学マスターへの道」(毎週木曜日発行)
 発行システム:『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/
 配信中止はこちらから→ http://www.mag2.com/m/0000184672.html
 ご意見・ご感想などはこちらへお願いします。
 → E-Mail math_master@hotmail.co.jp
 → BLOG  http://sora.mathemaster.com/
 バックナンバーはこちら
 → http://mathemaster.com/magback_index.htm
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


<< 前の記事へ      目次へ戻る      次の記事へ >>