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第0058号 対数の方程式(その5)

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┃  数学マスターへの道〜少なく覚えてとことん使う〜        ┃
┃         第0058号 (2007/02/28)             ┃
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 高校で数学を教えている現役教師が、数学の勉強の仕方、問題の解き方、考
え方についてちょっとしたヒントを毎週お届けします。

 今週は1・2年生の期末試験が行われています。その試験問題を作らなけれ
ばならなかったため、先週はメルマガをお休みしてしまいました。私が担当し
ている科目の試験は昨日終わりましたので、あとは採点と成績評価のみです。

 昨日は囲碁学校に行ってきました。囲碁学校は「講義+実戦対局」というメ
ニューになっています。昨日の対局は、永遠のライバルとお互いに認め合って
いるTさんとでした。私の方が終始勝勢だったのですが、今までもやってしま
っていた同じ失敗を繰り返してしまったのです…。

 続きは編集後記で。


 初めて読む方もいるかと思いますので、このメルマガでの記号の書き方につ
いての約束事を2、3書いておくことにします。


 ☆2乗、3乗などの表し方は、^2、^3とします。
 (例)xの2乗 ⇒ x^2

 ☆添え字は_1、_2といった形で書きます。
 (例)数列の初項、第2項などは ⇒ a_1、a_2
    対数の底a ⇒ log_a x



──Contents─────────────────────────────

 1.対数の方程式(その5)
 2.次号までの宿題
 3.宿題の解説

───────────────────────────────────


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  1.対数の方程式(その5)

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 対数の方程式の解法を何回かに分けて解説してきましたが、いかがでしょう
か?今回は、基本の問題の解き方の最後の仕上げとして、真数条件のチェック
を最初に行って解く、という教科書や問題集に載っている解き方でやってみた
いと思います。


 また、底の変換公式も組み合わせて解くような問題もありますので、それも
扱ってみたいと思います。


【例題】次の方程式を解いてください。

 (1) log_3 (x - 1) + 2 = log_3 (4x + 1)

 (2) log_9 (x + 5) = log_3 (x - 1)


 (1)は、方程式そのものは今までやってきたものと大きく変わりません。真
数条件を最初にチェックして解いていくことが今回のメインです。(2)は底が
異なった対数の方程式ですから……はい、その通りです。底を揃えるために、
底の変換公式を使うわけです。以上の点に留意しながら、以下の解説を読んで
ください。


 (1) log_3 (x - 1) + 2 = log_3 (4x + 1)

  真数は正でなければならないので、xは

   x - 1 > 0 …(イ)

   4x + 1 > 0 …(ロ)

  という不等式をどちらも満たさなければなりません。そこで、上の不等式
  を解きます。(イ)より

   x - 1 > 0

   ∴ x > 1 …(ハ)

  を得ます。(ロ)より

   4x + 1 > 0

   4x > -1

         1
   ∴ x > - ── …(ニ)
         4

  を得ます。xは上でも書きましたように(ハ)と(ニ)の両方を満たさな
  ければなりませんので、その共通の範囲は

   x > 1 …(ホ)

  となります。このあと得られたxの値が(ホ)を満たしていればOKで、
  満たしていなければ不適となります。では、いよいよ方程式を解きます。
  左辺、右辺ともに対数の底は3で同じですから、あとは

    log_3 ○ = log_3 △

  の形に変形すればいいんでしたね。

   log_3 (x - 1) + 2 = log_3 (4x + 1)

   log_3 (x - 1) + 2log_3 3 = log_3 (4x + 1)

   log_3 (x - 1) + log_3 3^2 = log_3 (4x + 1)

   log_3 (x - 1) + log_3 9 = log_3 (4x + 1)

   log_3 9(x - 1) = log_3 (4x + 1)  ┐ log_3 ○ = log_3 △
                     │    ↓     ↓
   9(x - 1) = 4x + 1  ←──────┘    ○  =  △

   9x - 9 = 4x + 1

   9x - 4x = 1 + 9

   5x = 10

   x = 2 …(ヘ)

  xの値が求まりましたので、真数条件に適しているかどうかの判定を行い
  ます。(ヘ)よりxの値は2です。これは(ホ)の「x>1」という条件を満
  たしていますのでOKです!したがって、求める方程式の解は

   x = 2
   ~~~~~~~
  となります。


 (2) log_9 (x + 5) = log_3 (x - 1)

  真数は正でなければならないので、xは

   x + 5 > 0 …(ト)

   x - 1 > 0 …(チ)

  という不等式をどちらも満たさなければなりません。そこで、上の不等式
  を解きます。(ト)より

   x + 5 > 0

   ∴ x > -5 …(リ)

  を得ます。(チ)より

   x - 1 > 0

   x > 1 …(ヌ)

  を得ます。(リ)と(ヌ)の共通の範囲は

   x > 1 …(ル)

  となります。次に方程式を解くわけですが、対数の底を見ると9と3で異な
  っています。そこでそれを底の変換公式を用いて統一します。

    9=3^2

  ですから、3がベースになっているということで、底を3に揃えます。

   log_9 (x + 5) = log_3 (x - 1)

   log_3 (x + 5)
   ─────── = log_3 (x - 1)
     log_3 9

   log_3 (x + 5)
   ─────── = log_3 (x - 1)
    log_3 3^2

   log_3 (x + 5)
   ─────── = log_3 (x - 1)
      2

   log_3 (x + 5) = 2log_3 (x - 1)

   log_3 (x + 5) = log_3 (x - 1)^2

   x + 5 = (x - 1)^2

   x + 5 = x^2 - 2x + 1 ─┐
               │左辺と右辺を入れ替えました
   x^2 - 2x + 1 = x + 5 ←┘

   x^2 - 3x - 4 = 0

   (x + 1)(x - 4) = 0

   x = -1 , 4 …(ヲ)

  (ヲ)のxの値のうち真数条件(ル)を満たしているのは x=4 です。した
  がって求める方程式の解は

   x = 4
   ~~~~~~~
  となります。




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  2.次号までの宿題

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 基本は一通り完了しましたので、入試問題にチャレンジしてみたいと思いま
す。(問題文は適宜変更してあります)


【練習問題】次の方程式を解いてください。

 (1) log_3 x = 4            ('06 東北工業大)

 (2) log_10 x + log_10 5 = 2      ('05 湘南工科大)

 (3) log_2 x = log_4 (2x + 3)      ('06 千葉工業大)

 (4) log_4 (x + 1) + log_(1/2) x = 1  ('05 芝浦工業大)


 (4)の問題が一番大変だと思います。2つめのlogの底が分かりづらいのです
が、底が1/2で真数がxです。がんばってチャレンジしてみてください。


 解答は次号で。




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  3.宿題の解答

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【練習問題】次の方程式を解いてください。

 (1) log_3 (x^2 - x - 1) = 0

 (2) log_2 (x - 2) + 2 = log_2 (3x + 1)

 (3) log_3 (2x-1) + 1 = log_3 (5x - 9)


〔解答〕

 (1) log_3 (x^2 - x - 1) = 0

   log_3 (x^2 - x - 1) = log_3 1

   x^2 - x - 1 = 1

   x^2 - x - 2 = 0

   (x + 1)(x - 2) = 0

   x = -1 , 2 …(ワ)

  与えられた方程式の真数 x^2 - x - 1 に(ワ)をそれぞれ代入すると、

  x=-1 のとき
   (-1)^2 - (-1) - 1 = 1

  x=2 のとき
   2^2 - 2 - 1 = 1

  となるので、どちらも適します。したがって求める解は

   x = -1 , 2
   ~~~~~~~~~~~~
  です。


 (2) log_2 (x - 2) + 2 = log_2 (3x + 1)

   log_2 (x - 2) + 2log_2 2 = log_2 (3x + 1)

   log_2 (x - 2) + log_2 2^2 = log_2 (3x + 1)

   log_2 (x - 2) + log_2 4 = log_2 (3x + 1)

   log_2 4(x - 2) = log_2 (3x + 1)

   4(x - 2) = 3x + 1

   4x - 8 = 3x + 1

   x = 9 …(カ)

  与えられた方程式の真数は x - 2 , 3x + 1 ですから、(カ)をそれぞれ
  代入すると、

  x=9 のとき
   9 - 2 = 7 , 3 × 9 + 1 = 28

  となるので、真数条件を満たします。したがって、求める解は、

   x = 9
   ~~~~~~~
  です。


 (3) log_3 (2x-1) + 1 = log_3 (5x - 9)

   log_3 (2x-1) + log_3 3 = log_3 (5x - 9)

   log_3 3(2x - 1) = log_3 (5x - 9)

   3(2x - 1) = 5x - 9

   6x - 3 = 5x - 9

   6x - 5x = -9 + 3

   x = -6 …(ヨ)

  与えられた方程式の真数は 2x - 1 , 5x - 9 ですから、(ヨ)をそれぞ
  れに代入すると、

   2 × (-6) - 1 = -13 , 5 × (-6) - 9 = -39

  となるので、これは真数条件を満たしません。

  ∴解なし
   ~~~~~~~




─…─編集後記─…───…───…───…───…───…───…──

 Tさんと私は棋力も近いのですが(最近私がサボっていたために多少遅れを
取っています…)、それ以上に長考同士なのです(笑)囲碁学校は時間が決ま
っていますので、時間が掛かるようだと対局時計を使うことになります。勝負
が長引きそうだと、途中から対局時計が投入されるわけです。私とTさんの対
局では、もちろん最初から対局時計が用意されました。「時間切れは形勢に関
わらず負け」なので、気をつけねば!と思っていたのですが、やってしまいま
した。。。そう、時間切れで負けてしまったのです。
 何も考えずに打つことは上達の妨げですが、あまり考え込みすぎても良いこ
とはありません。これは勉強についても言えることです。あれこれ考えるより
も問題を1つでも多く解いて、練習する方が効果があるということは多いもの
です。今回の失敗を次回に活かしていきたいと思います。またやってしまいそ
うですけどね(苦笑)

─…───…───…───…───…───…───…───…───…─

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