<< 前の記事へ      目次へ戻る      次の記事へ >>

第0057号 対数の方程式(その4)

☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃  数学マスターへの道〜少なく覚えてとことん使う〜        ┃
┃         第0057号 (2007/02/17)             ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆

 高校で数学を教えている現役教師が、数学の勉強の仕方、問題の解き方、考
え方についてちょっとしたヒントを毎週お届けします。

 私は何年か前までは趣味と呼べるものがありませんでした。現在では、ある
ことをきっかけにして始めた囲碁が趣味の1つになっています(とあるマンガ
の影響と言えばお分かりかと思いますが…笑)。数学の教員だというと、囲碁
が強そうに思えるらしいのですが、全然そんなことはないのです(涙)囲碁に
比べれば、高校の数学の方がはるかに簡単に思えるのですが、囲碁に関して、
まだ正しい発想法を身につけていないからだとも思っています。

 続きは編集後記で。


 初めて読む方もいるかと思いますので、このメルマガでの記号の書き方につ
いての約束事を2、3書いておくことにします。


 ☆2乗、3乗などの表し方は、^2、^3とします。
 (例)xの2乗 ⇒ x^2

 ☆添え字は_1、_2といった形で書きます。
 (例)数列の初項、第2項などは ⇒ a_1、a_2
    対数の底a ⇒ log_a x



──Contents─────────────────────────────

 1.対数の方程式(その4)
 2.次号までの宿題
 3.宿題の解説

───────────────────────────────────


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

  1.対数の方程式(その4)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 前号では真数条件をチェックすることが必要である、という例を挙げました。
今回は今までのことを踏まえた上で、もう少し複雑な問題を扱ってみたいと思
います。


【例題】次の方程式を解いてください。

 (1) log_2 (x + 1) + log_2 (x - 1) = 0

 (2) log_2 (x + 2) + 3 = log_2 (2x - 2)


 (1)は右辺が0なので、これをどう処理するかが問題となります。第0055号で
宿題に出した公式を使います。しつこいようですが、必要となる公式は理由を
一度納得した上でしっかりと覚えるようにしてください。(2)は真数条件がら
みの、ちょっと特殊な問題ですが、自分で解いたときには「あれ?」と思って
しまうタイプの問題です。真数条件のチェックが大切な問題の1つです。


 (1) log_2 (x + 1) + log_2 (x - 1) = 0

 右辺が0で、対数で表されていない定数なので、これを対数で表すことにし
ます。対数の7つの公式を思い浮かべてください。紙に書き出すのも良いでし
ょう。さて、どの式が使えそうですか?


 そうですね。7つの公式の中で0が出てくるのはただ1つだけです。

  log_a 1 = 0

です。これは、0は「真数=1、底=好きな値」として対数で表すことができる
ということを意味しています。実際に何を底として選べばいいかというと、左
辺の対数の底が2ですから、それを選べばOKです。


 以下の説明で、変形についてよく分からないという人は、7つの公式を書き
出して、それを見ながら何を使っているのか1つ1つ確認しながら式を読んで
いってください。メルマガのバックナンバーを参照するのも手ですね。


 では、方程式を解いていきましょう。


   log_2 (x + 1) + log_2 (x - 1) = 0

   log_2 (x + 1)(x - 1) = log_2 1

   (x + 1)(x - 1) = 1

   x^2 -1 = 1

   x^2 = 2

   x = ±√2 …(イ)

  求められたxの値が真数条件を満たしているかチェックします。最初に与
  えられた方程式の対数は log_2 (x + 1) と log_2 (x - 1) ですから、そ
  の真数は、

   x + 1 …(ロ), x - 1 …(ハ)

  です。(イ)の x=√2 を(ロ)、(ハ)に代入すると、

    (ロ)√2 + 1 (ハ)√2 - 1

  となります。√2 は約1.414ですから、(ロ)(ハ)ともに正となります
  ので、真数条件を満たしています。次に x=-√2 を(ロ)、(ハ)に代入
  すると、

    (ロ)-√2 + 1 (ハ)-√2 - 1

  となります。今度はどちらの真数も負になりますので、真数条件を満たし
  ていません。以上から、求める解は

   x = √2
   ~~~~~~~~~
  となります。


 (2) log_2 (x + 2) + 3 = log_2 (2x - 2)

   log_2 (x + 2) + 3log_2 2 = log_2 (2x - 2)

   log_2 (x + 2) + log_2 2^3 = log_2 (2x - 2)

   log_2 (x + 2) + log_2 8 = log_2 (2x - 2)

   log_2 8(x + 2) = log_2 (2x - 2)

   8(x + 2) = 2x - 2

   8x + 16 = 2x - 2

   8x - 2x = -2 - 16

   6x = -18

   x = -3 …(ニ)

 ずいぶん長い計算になってしまいましたが、使っていることは今までやって
きたことだけですから、実際に自分でやってみると、「なんだ、大したことな
いな!」と思うことでしょう。しかし、そこで油断をして真数条件のチェック
をしないと大変なことになります。では、真数条件のチェックをしてみましょ
う。

  最初に与えられた方程式のlogは、log_2 (x + 2) と log_2 (2x - 2) で
  すから、その真数は、

   x + 2 …(ホ), 2x - 2 …(ヘ)

  です。(ニ)の x=-3 を(ホ)、(ヘ)に代入すると、

   (ホ)-3 + 2 = -1 (ヘ)2 × (-3) - 2 = -8

  となり、真数が負の数になってしまいますから、真数条件を満たしません。
  え?ちょっと待ってください…!求められたxの値は1つしかないわけで、
  それがダメとなると…xに何を代入しても、与えられた方程式を満たすこ
  とはない、ということになってしまいます。ということで、この方程式の
  解は

   ない
   ~~~~
  ということになります!


 こういう問題のときによく使う台詞が「解なし」です。まあ、普通は対数の
方程式で解なしになるような問題を作ることはあまりないでしょうが、場合に
よってはこういうこともあるのだ、と覚えておいてください。


 ちなみに、第0055号の「2.前回の練習問題の解答」の最後で、「真数の方
程式を立てたときに、1次方程式であるような場合には真数条件をチェックす
る必要がない」と書いてしまいましたが、それは第0055号で扱った、一番シン
プルな形の方程式の場合であって、1次方程式になればどんな場合でも真数条
件のチェックが必要ないということではありません。不適切な書き方をしてし
まい、申し訳ありませんでした。今号の例を見ても分かるように、たとえ真数
を取り出して作った方程式が1次方程式であっても、真数条件のチェックによ
って不適となる場合がありますので、やはり真数条件のチェックは大事ですね。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

  2.次号までの宿題

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


【練習問題】次の方程式を解いてください。

 (1) log_3 (x^2 - x - 1) = 0

 (2) log_2 (x - 2) + 2 = log_2 (3x + 1)

 (3) log_3 (2x-1) + 1 = log_3 (5x - 9)


 (1)の問題で「x^2 - x - 1 = 0」という方程式を作りたくなってしまいます
が、そうではありませんね。上の例題の(1)の解き方をよく見て、間違えない
ようにしましょう。


 解答は次号で。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

  3.宿題の解答

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


【練習問題】次の方程式を解いてください。

 (1) log_2 (x + 1)(x - 3) = 5

 (2) log_2 (x + 1) + log_2 (x - 3) = 5


〔解答〕

 (1) log_2 (x + 1)(x - 3) = 5

   log_2 (x + 1)(x - 3) = 5log_2 2

   log_2 (x + 1)(x - 3) = log_2 2^5

   (x + 1)(x - 3) = 2^5

   x^2 - 2x - 3 = 32

   x^2 - 2x - 35 = 0

   (x + 5)(x - 7) = 0

   x = -5 , 7 …(ト)

  与えられた方程式の真数 (x + 1)(x - 3) に(ト)をそれぞれ代入すると、

  x=-5 のとき
   (-5 + 1)(-5 - 3) = 32

  x=7 のとき
   (7 + 1)(7 - 3) = 32

  となるので、どちらも適します。したがって求める解は

   x = -5 , 7
   ~~~~~~~~~~~~
  です。


 (2) log_2 (x + 1) + log_2 (x - 3) = 5

   log_2 (x + 1)(x - 3) = 5log_2 2

   log_2 (x + 1)(x - 3) = log_2 2^5

   (x + 1)(x - 3) = 2^5

   x^2 - 2x - 3 = 32

   x^2 - 2x - 35 = 0

   (x + 5)(x - 7) = 0

   x = -5 , 7 …(チ)

  与えられた方程式の真数は x + 1 , x - 3 ですから、(チ)をそれぞれ
  代入すると、

  x=-5 のとき
   -5 + 1 = -4 , -5 - 3 = -8

  x=7 のとき
   7 + 1 = 8 , 7 - 3 = 4

  となります。x=-5 は真数が負なので不適、x=7 は真数が正なので適しま
  す。したがって、求める解は、

   x = 7
   ~~~~~~~
  です。




─…─編集後記─…───…───…───…───…───…───…──

 囲碁は感覚や発想といったものが大事ですが、それだけで強くなれるもので
もありません。定石や基本的な死活のように、覚えなければならないことも沢
山あります。しかし、それらをただ丸暗記しただけでは実戦で効果的に使うこ
とはできません。理解し、繰り返し使うことで覚え、どういう場面でどういう
考え方をして何を使えばいいのかという判断力を身につけなければなりません。
それと同時に感覚や発想といったものも身につけていく必要があります。その
意味で、囲碁と数学は似ている所があるように思います。ヘボの私が言っても
あまり説得力がありませんが…(笑)

─…───…───…───…───…───…───…───…───…─

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 現役高校数学教師が送る「数学マスターへの道」(週2回発行)
 発行システム:『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/
 配信中止はこちらから→ http://www.mag2.com/m/0000184672.html
 ご意見・ご感想などはこちらへお願いします。
 → E-Mail math_master@hotmail.co.jp
 → BLOG  http://sora.mathemaster.com/
 バックナンバーはこちら
 → http://mathemaster.com/magback_index.htm
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 このメルマガに掲載された記事の無断転載・引用を禁じます。


<< 前の記事へ      目次へ戻る      次の記事へ >>