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第0053号 対数の方程式(その1)

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┃  数学マスターへの道〜少なく覚えてとことん使う〜        ┃
┃         第0053号 (2007/02/03)             ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆

 高校で数学を教えている現役教師が、数学の勉強の仕方、問題の解き方、考
え方についてちょっとしたヒントを毎週お届けします。

 普段から勉強している人にとっては、勉強をすることが苦痛ではありません。
しかし、今まで勉強していなかった人が勉強を始めようとすると、かなりの努
力が必要になります。頑張って始めたとしても、最初の意気込みが長続きしな
い、ということはよくあります。生徒には、まずはちょっとした目標を立てて、
そこから始めよう、少しでもいいから勉強をして、それを継続させるようにし
よう、と言っています。急に沢山はやらなくてもいいのです。最初のうちは、
ほんの少しでも構いません。昨日までがゼロなら、少しでもやればそれは進歩
なのですから!

 私も情報セキュリティの勉強を再開しました。これまではしばらく勉強する
と、時間がないとか、何らかの理由をつけて中断してしまうことが多かったの
ですが、どんなに時間がなくても、1ページでも1問でもいいから勉強を継続
しようと思っています。それが勉強を継続させる秘訣だと、思い出させてくれ
た本がありました。それについては編集後記で。


 初めて読む方もいるかと思いますので、このメルマガでの記号の書き方につ
いての約束事を2、3書いておくことにします。


 ☆2乗、3乗などの表し方は、^2、^3とします。
 (例)xの2乗 ⇒ x^2

 ☆添え字は_1、_2といった形で書きます。
 (例)数列の初項、第2項などは ⇒ a_1、a_2
    対数の底a ⇒ log_a x



──Contents─────────────────────────────

 1.対数の方程式(その1)
 2.練習問題
 3.前回の練習問題の解答

───────────────────────────────────


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

  1.対数の方程式(その1)

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 今回から、何回かに分けて対数の方程式を解く問題を扱っていきたいと思い
ます。


 まずは、方程式の基本形をマスターしてください。簡単なところからスター
トして、徐々に難しいものにチャレンジしていくことにしましょう。簡単なも
のといっても、そこが全ての基本となりますので、決しておろそかにせず、き
ちんとマスターするように心がけてください。


 最もシンプルな形の対数の方程式は、

  log_a x = b

です。底が未知数となっている方程式も考えられますが、高校ではほとんど扱
いませんので、今回の連載では考えないことにします。


 上の基本となる方程式について、2通りの解き方が考えられますが、今回は
そのうちの1つを取り上げます。これは、教科書などでもまず一番最初に書か
れている基本的な解き方です。


 ┌────────────────────────────┐
 │                            │
 │ 解き方1 対数の定義「log_a x = b ⇔ x = a^b」を使う │
 │            ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~     │
 └────────────────────────────┘


 さっそく例題の解説に入りましょう。


【例題】次の方程式を解いてください。

 (1) log_3 x = 2

 (2) log_2 (x - 4) = 5


 上で書いた解き方1の対数の定義に当てはめて、対数の方程式を指数を用い
た式に変形します。


 (1) log_3 x = 2

   x = 3^2

    = 9
     ~~~


 どうですか?簡単でしょう?そんなこと言われても、分からないよーー!と
いう人は、上の「解き方1」の式をもう一度見てみましょう。

  log_a x = b    │  log_3 x = 2
           │
      ↓    │      ↓
           │
     x = a^b   │  左の式と見比べて式を作りましょう!


 分かりました?では、勢いに乗って(笑)、(2)もいってみましょうか!


 (2) log_2 (x - 4) = 5

 この方程式では、真数は x-4 で、底が2です。したがって。。。

   x - 4 = 2^5

   x - 4 = 32

   ∴ x = 36
       ~~~~

 一番最後に書いた「∴」という記号は、「ゆえに」と読みます。この「∴」
の使い方が分からないという人がいますが、そんなに難しく考えなくてもOK
です。ココで言えば、方程式をあれこれと変形していって、最後の最後でxの
値が求められたわけです。「これで終わりだぜ!」というくらいの気持ちで、
最後の決め台詞のように使ってください(笑)決め台詞ですから、多用すると
カッコ悪いですよね。だから、ここぞ!というときまで待って、最後にカッコ
良く決めてください。


 基本方針1は定義の式をそのまま使いますので、とてもシンプルで、分かり
やすいのですが、欠点がないわけではありません。どんな優れた技や道具でも
全てに対して1つだけで対処できる、ということは少ないと思います。そのと
きの場面場面に応じて使い分ける、という柔らかな発想が大事です。日常生活
と同じですよね。欠点といっても大したものではありませんので、そのうち書
くことにします。今はこの基本の形をしっかりとマスターしてください。




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  2.練習問題

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【練習問題】次の方程式を解いてください。

 (1) log_4 x = 3

 (2) log_3 (2x + 1) = 2

 解答は次号で。




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  3.前回の練習問題の解答

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【練習問題】次の対数の計算をしてください。

 (1) log_3 18 - log_9 12

 (2) log_8 5 ・ log_49 16 ・ log_5 7


 底の変換公式、覚えていますか?前回覚えたんだけど、忘れてしまったとい
う人は、今覚えてみましょう。そうしたら、20分後にもう一度覚えているか、
紙に書いてみてください。そこでちゃんと書けたら、明日の今頃にもう一度書
いてみてください。そこで書ければ、しばらくは覚えているでしょうから、覚
えているうちに、計算練習で何度か使うようにしましょう。そうすれば自然と
底の変換公式を使えるようになっている自分を発見することと思います!ただ
し、覚えるときには、なるべくイメージや言葉などで補いながら覚えるコトを
忘れずに。


 では、前回の問題の解答を載せます。


 (1) log_3 18 - log_9 12

〔解答1〕方針(A)「合体」

   log_3 18 - log_9 12

         log_3 12
  = log_3 18 - ────
         log_3 9

             log_3 (2^2 × 3)
  = log_3 (2 × 3^2) - ────────
               log_3 3^2

             log_3 (2^2 × 3)
  = log_3 (2 × 3^2) - ────────
                 2

    1
  = ──{2log_3 (2 × 3^2) - log_3 (2^2 × 3)}
    2

    1
  = ──{log_3 (2 × 3^2)^2 - log_3 (2^2 × 3)}
    2

    1
  = ──{log_3 (2^2 × 3^4) - log_3 (2^2 × 3)}
    2

    1     2^2 × 3^4
  = ──(log_3 ──────)
    2      2^2 × 3

    1
  = ── log_3 3^3
    2

    1
  = ── × 3
    2

    3
  = ──
    2
   ~~~~~~

〔解答2〕方針(B)「分解」

   log_3 18 - log_9 12

         log_3 12
  = log_3 18 - ────
         log_3 9

             log_3 (2^2 × 3)
  = log_3 (2 × 3^2) - ────────
               log_3 3^2

             log_3 (2^2 × 3)
  = log_3 (2 × 3^2) - ──────── ← ここまでは解答1と同じ
                 2

               1
  = log_3 2 + log_3 3^2 - ──(log_3 2^2 + log_3 3)
               2

           1
  = log_3 2 + 2 - ──(2log_3 2 + 1)
           2

                1
  = log_3 2 + 2 - log_3 2 - ──
                2

    3
  = ──
    2
   ~~~~~~

 (2) log_8 5 ・ log_49 16 ・ log_5 7

 3つの対数の掛け算ですが、前回と同じように底の変換公式を用いて底を揃
えれば計算でます。そこで、底を見てみると、

  8 (= 2^3)

  49 (= 7^2)

  5

となっていますので、変換する底としては2、5、7のどれかを選べば良いでし
ょう。ここでは、5を選んで計算してみます。2、7でも同じ結果になりますの
で、練習のつもりで試しにやってみてください。


   log_8 5 ・ log_49 16 ・ log_5 7

   log_5 5   log_5 16
  = ──── ・ ──── ・ log_5 7
   log_5 8   log_5 49

     1     log_5 2^4
  = ───── ・ ───── ・ log_5 7
   log_5 2^3   log_5 7^2

     1     4log_5 2
  = ───── ・ ───── ・ log_5 7
    3log_5 2   2log_5 7

    2
  = ──
    3
   ~~~~~~

 では、2や7ではなく底を8や49にしてしまったらどうなるのでしょうか?論
より実行です!やってみることにしましょう。底を8にした場合でやってみま
す。


   log_8 5 ・ log_49 16 ・ log_5 7

         log_8 16  log_8 7
  = log_8 5 ・ ──── ・ ────
         log_8 49  log_8 5

         log_8 2^4   log_8 7
  = log_8 5 ・ ───── ・ ────
         log_8 7^2   log_8 5

         4log_8 2   log_8 7
  = log_8 5 ・ ───── ・ ────
         2log_8 7   log_8 5

  = 2log_8 2 ← あれれ?


 ここで多くの人が困ってしまい、このままで終わりにしてしまうことがあり
ます。log_8 2 をよく見ると、底が 8=2^3 、真数が 2 で、どちらも 2 を基
にして作られている数です。こういう場合には、底を2に変換してやると値を
求めることができるのです。


  <続き>

      log_2 2
  = 2 ・ ────
      log_2 8

        1
  = 2 ・ ─────
      log_2 2^3

      1
  = 2 ・ ──
      3

    2
  = ──
    3
   ~~~~~~

 最後に底の変換が必要になってしまいましたので、最初に書いたように、底
を最初から2、5、7のどれかにしておく方が計算がラクです。ただ、決して間
違いではありませんし、最後に底の変換をすればいいだけですから、そんなに
神経質になる必要はないでしょう。




─…─編集後記─…───…───…───…───…───…───…──

 ブログでも書きましたが、最近石井裕之氏と東山紘久氏の本を交互に読んで
いるような状態です。その中で、石井裕之氏の『「心のブレーキ」の外し方』
と『ダメな自分を救う本』には感銘を受けました。自分が今まで生徒に言って
きたことや、伝えたくてもうまく伝えられなかったことがそこに書かれており、
これからどう指導していけばいいかについての大きな示唆を与えてくれました。
それと同時に、「モチベーション」については、生徒に言っておきながら私自
身ができていない、ということもあらためて感じました。

 今は『ダメな自分を救う本』に書かれている「ワーク」をやりながら読み返
しています。気持ちが前向きにならない、「やる気」が長続きしない、と思っ
ている方は、読んでみて損はないと思います。書店でもすぐ手に入ると思いま
すし、Amazonであればこちらからでも購入できます。
 ⇒ http://astore.amazon.co.jp/mathteachesbl-22

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 現役高校数学教師が送る「数学マスターへの道」(週2回発行)
 発行システム:『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/
 配信中止はこちらから→ http://www.mag2.com/m/0000184672.html
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