第0044号 不等式の解(怪?)(その2)
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┃ 数学マスターへの道〜少なく覚えてとことん使う〜 ┃
┃ 第0044号 (2006/09/06) ┃
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新学期が始まり、推薦、AOの準備などで、なかなかメルマガの原稿に手を
つけることができません。いえ、恐らくは気力の問題だと思います。単なる言
い訳に過ぎませんね…。スミマセン。。。
来週もメルマガを発行できるかどうか、ちょっと自信がありません。落ち着
いたらきちんと発行していきたいと思います!
初めて読む方もいるかと思いますので、このメルマガでの記号の書き方につ
いての約束事を2、3書いておくことにします。
☆2乗、3乗などの表し方は、^2、^3とします。
(例)xの2乗 ⇒ x^2
☆添え字は_1、_2といった形で書きます。
(例)数列の初項、第2項などは ⇒ a_1、a_2
──Contents─────────────────────────────
1.不等式の解(怪?)(その2)
2.対数の基本公式(その2)
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1.不等式の解(怪?)(その2)
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方程式の解は、それが正しい解であるかどうかを確かめるのに、代入をする
という方法があります。もともと、それが方程式の解の定義でもありますので、
それを使って解く問題なども多くあります。しかし、不等式では「代入」とい
うことができません。そこで戸惑う人もいるのではないかと思います。
まず、方程式に関する次の問題を考えてみましょう。(問題そのものは簡単
なものにしています)
┌──────────────────────────────────┐
│ │
│ 問1 方程式 ax + 3 = 0 の解が x=1 であるとき、定数aの値を求めな │
│ さい。 │
│ │
└──────────────────────────────────┘
方程式
ax + 3 = 0 …(イ)
の解が x=1 であるということですから、方程式の解の意味から考えて、(イ)
に x=1 を代入すると等号が成り立ちます。ですから、方程式の解「x=1」を
(イ)に代入して、
a・1 + 3 = 0
というaについての方程式が得られ、これを解いて a=-3 が求められます。
では、これが不等式だったらどうなるでしょうか?
┌──────────────────────────────────┐
│ │
│ 問2 不等式 ax + 3 < 0 の解が x>1 であるとき、定数aの値を求め │
│ なさい。 │
│ │
└──────────────────────────────────┘
この問題で、「x<1」という不等式を「代入」しようとして、うまくいかな
かったという経験のある人は結構いるのではないかと思います。実はその昔、
私も同じことを考えました。そして、なぜ代入してはいけないのか、というこ
とを考えることで、理解が深まった記憶があります。「なぜ、どうして」を考
えることが非常に大切なのですが、最近の教育ではそれが薄れているような気
がします。
すみません、話が逸れました。なぜ代入してはいけないか、ということです
が、そもそも「代入」とは「代わり」に「入れる」わけですから、等しくなけ
れば「代わり」にならないのです。それから、「x>1」がこの不等式の解であ
るということは、1より大きければどんな値をxに「代入」しても、不等号が成
り立つということを意味しています。すべての値を「代入」することはできま
せんし、また、あくまでも不等号が成り立つだけですから、個々の値を代入し
ても、aの値が定まることはありません。
そこで、不等式の場合には次のように考えます。
文字係数を含んだまま不等式を解き、それを与えられた解と比較して、定
数の値を求める
では、実際にやってみましょう。
与えられた不等式
ax + 3 < 0 …(ロ)
をこのまま解いてみます。
ax + 3 < 0
ax < -3
両辺をaで割りますが、不等式では負の数を掛けたり、負の数で割ったりす
ると不等号の向きが変わりますので、場合分けをしなければなりません。
(i)a>0 のとき
3
x < − ── …(ハ)
a
(ii)a<0 のとき(両辺を負の数で割ると不等号の向きが変わるので)
3
x > − ── …(ニ)
a
不等式の解が「x>1」であるということは、ここで求められた解が「x>1」と
同じだということになります。そうすると、(ハ)は不等号の向きが異なりま
すので、ダメです。(ニ)が「x>1」と同じだということは、(ニ)の右辺が
1と等しいということになります。ここで初めて、aについての方程式が作れる
ことになります。すなわち
3
− ── = 1
a
となり、これを解いてaの値を求めると、a=-3 となります。そして、これは、
「a<0 のとき」として導いた値ですから、この条件を満たしていなければな
りません。求められたaの値は -3 でマイナスですから、OKですね!求めら
れたaの値は問1と同じになりましたが、考えていることは全く違うというこ
とが分かったのではないかと思います。
このように、不等式では方程式よりも考えなければならないことが多くあり
ます。それが不等式が分かりづらいと言われる原因の1つであると思います。
ただ、考え方に慣れれば次第にできるようになりますので、苦手な方はこれと
似た問題を数多く解いて練習しましょう。
(注)文字で割り算をするときには、その値が0かそうでないか、ということ
をチェックあるいは場合分けしなければいけませんが、今回は不等式の解がメ
インでしたので、文字係数が正か負かだけに絞って書きました。
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2.対数の基本公式(その2)
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今回は次の対数の基本公式について、その証明と公式の見方について書くこ
とにします。
┌──────────────────┐
│ log_a xy = log_a x + log_a y │
└──────────────────┘
まず、対数とは何か、についてもう一度確認しておきます。対数とは指数を
求める計算でした。そうすると、
左辺はaを底としたときのxyの指数
右辺はaを底としたときのxの指数とyの指数を足したもの
となります。つまり、
真数を掛けたものの指数は、それぞれの真数の指数を足してやればよい
ということです。ちょっと分かりにくいかもしれませんが、これは要するに指
数法則の1つを表しているのです。したがって、証明も指数を用いて表した形
に直して考えていきます。
では、この公式を導いてみたいと思います。右辺のlog_a x と log_a y に
ついて
log_a x = s , log_a y = t …(ホ)
とおきます。そうすると、対数の定義により、
x = a^s , y = a^t …(ヘ)
という式が成り立ちます。左辺では xy の対数を考えていますので、(ヘ)を
xy に代入すると、
xy = a^s・a^t
となります。この右辺は a^s 、a^t のどちらも底がaですから、その掛け算は
指数法則により、
xy = a^s・a^t ← 掛け合わせる前の指数はsとt ┐
├(ト)
= a^(s+t) ← 掛け合わせた後の指数はsとtを足したもの ┘
となります。したがって、
log_a xy = log_a a^(s+t)
= s + t
が成り立ち、このs、tに(ホ)を代入すると、求める公式
log_a xy = log_a x + log_a y
が導けます。これは(ト)の内容を対数を使って表現したものに他なりません。
次に、この公式の見方ですが、これを使うときには2通りの使い方がありま
す。ちょうど展開公式と因数分解の公式の関係に似ていますが、
log_a xy = log_a x + log_a y …(チ)
log_a x + log_a y = log_a xy …(リ)
というように、log_a xy を log_a x と log_a y に分解する(チ)という使
い方と、log_a x と log_a y を合体させて log_a xy にする(リ)という使
い方の2つが考えられるのです。そのときの場面によって、どちらを使うかは
変わってきますが、こういった見方を意識するようにすることは、問題を解く
上でも、大切なことだと思います。
─…─編集後記─…───…───…───…───…───…───…──
また、前号の発行から間が空いてしまいました。反省の日々です。仕事が忙
しいのは確かですが、100%努力しているかと問われると、答えに詰まります。
AO入試について、学科試験では見ることのできない力を見ようという趣旨は
よく分かりますが、高校の教員にかかってくる負担は、大きなものになってき
ます。これは他の高校の先生も言っているところです。中心は生徒ですが、残
念ながら自分ひとりの力では合格できる書類を作り上げることができません。
もちろん、大学に入る前にいろいろと考えたり調べたりするチャンスを得るわ
けですから、その意味では生徒たちにとって、大変ではありますが得るものは
大きい入試形態だと思います。ですが、、、教員はツライです(T_T)
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