第0043号 不等式の解(怪?)(その1)
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┃ 数学マスターへの道〜少なく覚えてとことん使う〜 ┃
┃ 第0043号 (2006/08/23) ┃
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お盆をはさんで、たっぷり2週間休むことができました。その間、メルマガ
もお休みしてしまいました(汗)休んでリフレッシュできたのは良いのですが、
その分仕事が終わっていないため、大変なことになっています(苦笑)
初めて読む方もいるかと思いますので、このメルマガでの記号の書き方につ
いての約束事を2、3書いておくことにします。
☆2乗、3乗などの表し方は、^2、^3とします。
(例)xの2乗 ⇒ x^2
☆添え字は_1、_2といった形で書きます。
(例)数列の初項、第2項などは ⇒ a_1、a_2
──Contents─────────────────────────────
1.不等式の解(怪?)(その1)
2.対数の基本公式(その1)
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1.不等式の解(怪?)(その1)
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方程式を解くのはできるけど、不等式はよく分からない、という人が結構い
ます。根本的には同じことを考えているのですが、求めた解の形が違うことと、
求められた解の取り扱い方が違うことなどが原因ではないかと思います。
解の形については、
・方程式は等号を使って解を表し、解は「特定の値」である
・不等式は不等号を使って解を表し、解は「範囲」である
というように考えられていると思います。(しかし、実際には不等式であって
も、等号を使って解を表す場合もあります)
「解」という言葉を最初に学習するのは、方程式を「解く」ことを習うとき
ですから、「解」といったら「特定の値」ということが刷り込まれてしまって
いても仕方のないことだと思います。
方程式、不等式の「解」とは、与えられた方程式や不等式を満たす値の集ま
りのことです。それが方程式では、たまたま1つであったり、2つであったり
するだけの話なのです。不等式では、通常、与えられた不等式を満たす値をす
べて書き出すことができず、不等号を使って表せば、「値の範囲」としてそれ
らをすべて網羅することができるのです。
ちょっと抽象的になってしまいました。分かりづらいと思いますので、例を
挙げて説明しましょう。
3x + 6 = 0 …(イ)
(イ)の左辺にある変数xに-2を代入すると、左辺の値が0になり、等号が成り
立ちます。したがって、x=-2 がこの方程式(イ)の解であるということにな
ります。(ここでは、どうやってこの値を求めるのか、つまり「解き方」につ
いては説明しません。あくまでも解とは何かにだけ焦点を絞ります)さらに、
この-2以外にはこの方程式を満たすような値はありません(この説明も省略し
ます。スミマセン)ので、結局(イ)の解は、x=-2 だけということになりま
す。
3x + 6 < 0 …(ロ)
この不等式の左辺の変数xに-3を代入すると、左辺の値は-3となり、この不等
号が成り立ちますので、x=-3 はこの不等式(ロ)を満たします。しかし、そ
れ以外にも、x=-4 でもOKですし、x=-4.2 でもOKです。方程式や不等式を「解
く」というのは、その方程式や不等式を満たす値を「残らず求める」というこ
となので、これではキリがありません。そこで、不等式(ロ)を満たすために
は、どんな条件をクリアしていればよいのか、といった考え方をしてみるので
す。そうすると、-2より小さい値ならどんな値でも不等式(ロ)を満たすとい
うことにたどり着きます。(繰り返しますが、どうやってそれを求めたのかは
ここでは問題にしません…)その「-2より小さい値全部」という条件を式で表
したものが、「x<-2」という書き方なのです。
このように、方程式や不等式の解とは何か、不等号を使って表された「解」
が、どういうことを意味しているのかを理解すると、今までよりも「不等式を
解く」ということが分かってくるのではないかと思います。
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2.対数の基本公式(その1)
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対数は指数を求める計算である、ということは第0041号で書きました。
log_○ △
は、△が○の何乗であるかを求める計算です。もちろん、整数や有限の小数で
求められる場合もあれば、√2 などのように、無理数となる場合もあります。
ただ、指数を求める計算だということを理解するだけで、いくつかの基本公式
を導くことができます。
まずウォーミングアップとして、log_2 8 の値を考えてみましょう。8が2の
何乗であるかを求めるのですから、
8 = 2^3
が成り立つことから、
log_2 8 = 3
となります。
では、次の対数の値はいくつでしょうか?
log_2 2^3
同じように考えれば、2^3は2の何乗であるかを求めるということになるのです
が、意外にここで悩む人がいます。難しく考える必要はありません。言葉で言
うと、
2の3乗は2の何乗ですか?
となります。分かりますか?分からない人は難しく考えすぎています(笑)
2の3乗は… 2の… そうです「3乗」です!
当たり前ですよね(笑)ということで、次の公式が成り立ちます。
log_a a^n = n …(ハ)
上で書いたことを文字で表しただけです。すなわち
aのn乗は、aの何乗ですか? ⇒ n乗です!
ということを、式で書いたのが(ハ)の式です。これをさらに言葉で補って覚
えるようにします。
真数が底の○乗という形であるときには、対数の値は○になる
あるいは、
log_a a^n = n
↑↑
同じ
というように、特徴をつかんで覚えればよいでしょう。
(ハ)の公式からすぐに導けるものですが、特にnの値が1であるとき、
a^1 = a
ですから、
log_a a^1 = log_a a = 1
つまり
log_a a = 1 …(ニ)
が成り立ちます。これも簡単な式なのですが、かえって迷ったりします。最初
の意味に戻って考えてみると、
aはaの何乗ですか?
ということなのですが、上のケースよりも意外にパッとは答えられない人が多
いです。上にも書きましたが、
a = a^1
ですから、aはaの1乗です。したがって、log_a a の値は1となります。
(ハ)も(ニ)もここでは公式と呼びましたが、自在に扱えるようになって
ほしい「基本性質」とも呼ぶべきものでしょう。
最後にもう1つ。log_a 1 の値はいくつでしょうか?これも基本性質として
自在に使えるようになってほしいものです。
これは指数の拡張を学習した後で学ぶものですから、そこの知識がないと分
からないと思います。ここではその部分の説明は省きますが、a≠0 であるす
べてのaについて、
a^0 = 1
が成り立ちますので、1はaの0乗ということになります。すなわち、
log_a 1 = 0 …(ホ)
です。「真数が1である対数の値は0」と言葉も補って覚えましょう。
以上、(ハ)〜(ホ)の3つの式を「基本公式(基本性質)」として、まと
めて覚えてください。説明と順番が前後しますが、単純な形のものから、
log_a 1 = 0
log_a a = 1
log_a a^n = n
というような順番で書くほうが覚えやすいと思います。(人によって違うかも
しれませんが…笑)
─…─編集後記─…───…───…───…───…───…───…──
logという見慣れない記号を使いますので、敬遠されがちな対数ですが、意
外に素直な性質を持っています。特に数IIで扱う対数は得点源にしやすい問題
が多いので、しばらく対数を扱っていこうと思います。
不等式については、方程式に比べて感覚的に掴みにくいとことがあるようで
す。非常に伝えにくいところでもありますが、不等式についても何回か解説を
試みようと思っています。
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