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第0041号 グラフの平行移動と方程式(その2)


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┃  数学マスターへの道〜少なく覚えてとことん使う〜        ┃
┃         第0041号 (2006/08/02)             ┃
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 先週も1週間休んでしまいました。思ったほど暇にはならないですね(分か
っていたことではありますが…)。


 初めて読む方もいるかと思いますので、このメルマガでの記号の書き方につ
いての約束事を2、3書いておくことにします。


 ☆2乗、3乗などの表し方は、^2、^3とします。
 (例)xの2乗 ⇒ x^2

 ☆添え字は_1、_2といった形で書きます。
 (例)数列の初項、第2項などは ⇒ a_1、a_2



──Contents─────────────────────────────

 1.グラフの平行移動と方程式(その2)
 2.指数と対数の切っても切れない関係

───────────────────────────────────


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  1.グラフの平行移動と方程式(その2)

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 前回、原点を中心とした円の方程式を平行移動させましたが、移動した後の
方程式を書かずに終わらせてしまいました。まずは前回の続きから書くことに
します。


 x^2 + y^2 = r^2 をx軸方向にp、y軸方向にqだけ平行移動した円の方程式は、

  (x-p)^2 + (y-q)^2 = r^2

となります。したがって、前回書いたように、元々原点にあった中心が、x軸
方向にp、y軸方向にqだけ平行移動したわけですから、移動した後の円の中心
は、(p, q)ということになります。そして、平行移動しただけですから、半
径は変わりません。


 これより、中心が(p, q)で半径がrの円の方程式は

  (x-p)^2 + (y-q)^2 = r^2

となります。このように、基本となる公式と平行移動の考えを身につけておけ
ば、たくさんの公式を覚えずに済みます。そして、繰り返し使っていくことで、
自然と「思い出せる」ようになっていけばOKです。


 円の方程式の話をしましたので、ついでと言っては何ですが、円の接線の方
程式について触れておきたいと思います。接線の方程式の導き方については、
ここでは取り上げません。現在教科書に載っているのは原点を中心とした円の
接線の方程式の公式のみです。それを基にして、中心が原点以外の点にある円
の接線の方程式の公式を導いてみたいと思います。


 ┌─円の接線の方程式の公式(その1)────────────┐
 │                             │
 │ 円 x^2 + y^2 = r^2 上の点(a, b)における接線の方程式は │
 │                             │
 │   ax + by = r^2                    │
 │                             │
 │ である。                        │
 │                             │
 └─────────────────────────────┘

 教科書に載っている公式は、接点の座標を(x_0, y_0)としているのですが、
テキストベースのメルマガでは見づらくなってしまいますので、(a, b)とし
ました。


 さて、これを基にして、円 (x-p)^2 + (y-q)^2 = r^2 上の点(a, b)にお
ける接線の方程式を求める公式を作ります。もちろん使うのは、「平行移動」
です!


 円 (x-p)^2 + (y-q)^2 = r^2 …(イ)は、円 x^2 + y^2 = r^2 …(ロ)を
x軸方向にp、y軸方向にqだけ平行移動した図形です。円(イ)上の点(a, b)
は、円(ロ)上の点(a', b')が移動したものとします。


 円(イ)上の点(a, b)における接線は、円(ロ)上の点(a', b')におけ
る接線を、やはりx軸方向にp、y軸方向にqだけ平行移動したものです。


 円(ロ)上の点(a', b')における接線の方程式は、

  a'x + b'y = r^2

ですから、それをx軸方向にp、y軸方向にqだけ平行移動した直線の方程式は、

  a'(x-p) + b'(y-q) = r^2 …(ハ)

となります。


 点(a', b')がx軸方向にp、y軸方向にqだけ移動した点が(a, b)ですから、
次の式が成り立ちます。

  a' + p = a
  b' + q = b

これをa'、b'について解くと、

  a' = a - p
  b' = b - q

となります。さらにこれを(ハ)に代入すると、

  (a-p)(x-p) + (b-q)(y-q) = r^2

となります。これで接線の方程式の出来上がりです。


 ┌─円の接線の方程式の公式(その2)────────────┐
 │                             │
 │ 円 (x-p)^2 + (y-q)^2 = r^2 上の点(a, b)における接線の │
 │ 方程式は                        │
 │                             │
 │   (a-p)(x-p) + (b-q)(y-q) = r^2            │
 │                             │
 │ である。                        │
 │                             │
 └─────────────────────────────┘


 決して易しいとは言いませんが、基本となる公式と平行移動の考えを組み合
わることで、新たな公式を導く経験はできたのではないかと思います。


 では最後に、円の接線の公式の「その1」と「その2」の覚え方を考えてみ
てください。次回のメルマガで、私が授業で紹介している覚え方を紹介します。
ですが、まずは自分なりにどうやったら覚えやすいかを考えてみてください。
ひょっとしたら、私が紹介する方法より、ずっと覚えやすい方法があるかもし
れません。もし、もっと覚えやすい方法があったら、こっそり教えてください
ね(笑)




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  2.指数と対数の切っても切れない関係

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 指数と対数は非常に密接な関係があります。この辺を理解しておかないと、
「計算はできるけど、結局対数って何?」といった疑問が常に残ることになり
ます。


 指数関数は y = a^x という形の式で表されるものですが、数Iまでの指数の
定義(同じ数を繰り返し掛けたもの)からすれば、aのx乗を考えるときに、x
に入る数は、自然数だけになります。本来は指数の拡張についての話を先にし
て、それから対数に入っていくのですが、ここではaのx乗について、指数xに
は、自然数だけでなく実数も入れることができることを前提にして話を進めて
いきます。


 まず、指数方程式を考えてもらうのが分かり易いと思います。次の等式を満
たすxはいくつでしょうか?

  3^x = 81 …(ニ)

81を素因数分解すると、3^4となります。ですから、(ニ)の式は、

  3^x = 3^4

となります。左辺、右辺ともに3の〜乗という形になっています。そしてその
左辺と右辺の値が等しいと言っているのが(ニ)の式ですから、当然指数であ
るxと4も等しいということになります。と、いうことで(ニ)の解は、

  x = 4

となるわけです。


 ここで、説明が面倒なので、用語を確認しておきます。(こういうときに用
語って便利だな〜、と思います)「aの〜乗」というとき、このaを「底」とい
います。読みは「てい」です。「そこ」ではありませんので、注意してくださ
い。上の例のように、左辺と右辺がともに「aの〜乗」という底が等しい形に
表せれば、あとは指数同士が等しいという風に方程式を解くことができます。


 しかし、いつもこのようにうまくいくとは限りません、たとえば、

  3^x = 5 …(ホ)

という方程式があったとします。左辺は底が3ですが、右辺を底を3にして表す
ことはできません。しかし、指数関数のグラフなどから、方程式(ホ)は解を
持つだろうという予想はできます。しかし、それを表す手段がないのです。


 …


 はい!その通りです。それを表す手段がないのなら、作ってしまえ!という
ことで、「対数」という計算方法とそれを表す記号を作り出してしまったので
す。(ホ)の式から、xに当てはまる値を求める計算を、

  x = log_3 5

と書くことにします。つまり、対数(log)とは、「指数を求める計算」なの
です。この値を求めようとすると、小数点以下いつまでも終わりのない、無限
小数となります。しかも循環しない、無理数というやつです。そうです。√2
や√3などと同じです。ですから、こういった形でしか書き表しようがないの
ですね。最初は戸惑いますが、要は「慣れ」の問題ですから、早めに慣れるよ
うにしてください。


 最初に書きました指数関数の式で書きますと、

  y = a^x …(ヘ)

に対して、指数であるxの値を求めようという計算、すなわち(ヘ)の式をx=
の形に変形する計算が対数なのです。

  x = log_a y …(ト)

つまり、(ヘ)と(ト)の二つの式は同値な式なのです。


 通常、関数というときには、(文字は必ずしもxとyだと決まっているわけで
はありませんが)「xの値を決めるとyの値がただ一つ決まる」ということで、
y= の形に書くことが多いのです。したがって、(ト)の式のxとyのラベルを
張り替えて、

  y = log_a x …(チ)

と書き直して、これを対数関数と呼んでいるのです。このように指数と対数は
同じ式の表と裏のような、切っても切り離すことのできない関係にあるのです。
実際、対数の問題を考えるときに、指数の形に直して考えることは多いです。
ですから、このあたりの指数と対数の関係をきちんと把握しておくことが、対
数に関する色々な性質や、公式を理解する上で大切になってくるのです。




─…─編集後記─…───…───…───…───…───…───…──

 対数の計算は、慣れないと大変ですが、使うべき公式や性質は多くありませ
んので、理解して練習をきちんとすれば、入試などでも得点源になりうる分野
です。

─…───…───…───…───…───…───…───…───…─

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 現役高校数学教師が送る「数学マスターへの道」(週2回発行)
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