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第0038号 平方完成の極意(その3)


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┃  数学マスターへの道〜少なく覚えてとことん使う〜        ┃
┃         第0038号 (2006/06/26)             ┃
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 今週、来週と期末試験の準備やら、たまってしまった仕事やらで、メルマガ
の発行が不定期となりそうな予感がします(涙)またか!と思われる方もいる
かと思いますが、本業が第一ということで、お許し下さいm(_ _)m


 初めて読む方もいるかと思いますので、このメルマガでの記号の書き方につ
いての約束事を2、3書いておくことにします。


 ☆2乗、3乗などの表し方は、^2、^3とします。
 (例)xの2乗 ⇒ x^2

 ☆添え字は_1、_2といった形で書きます。
 (例)数列の初項、第2項などは ⇒ a_1、a_2



──Contents─────────────────────────────

 1.平方完成の極意(その3)
 2.練習問題

───────────────────────────────────


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

  1.平方完成の極意(その2)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 前回は、x^2の係数が1の場合の平方完成のやり方を説明しました。今回は、
x^2の係数が1ではない場合について、どうすればよいか説明します。


【例題1】3x^2 + 6x + 7 を平方完成してください。

 ポイントは次の2つです。

  一、x^2の係数が1であれば平方完成できる
  一、まず問題となるのはxを含む項で、定数項はあと回し

x^2の係数を1にすればできると分かっていても、与えられた式を係数の3で割
ったりしたら、最初の式と等しくなくなってしまうので、イケマセン。(あと
から3倍して元に戻す、という裏技がありますが、3倍し忘れる危険性が高いの
で、オススメできません)


 そこで、局所的であってもx^2の係数が1になればいいわけですから、x^2の
係数の3でくくってやることを考えます。つまり、

  3x^2 + 6x + 7 = 3(x^2 + ……

という形にしてやれば、カッコの中ではx^2の係数が1になります。では、実際
にやってみましょう。

    ┌─────定数項はあと回しでいいので、
    ↓     この部分で考える
  3x^2 + 6x + 7
  ~~~~~~~~~
 = 3(x^2 + 2x) + 7
   ↑  ↑
  ここは └────問題は、これをどうやって求めるか ⇒ (※)
  いつでもx^2

 = 3{(x + 1)^2 - 1^2} + 7
   ↑   ↑   ↑
   │ x^2+2xを  │
   │ 平方完成  │
   └───┬───┘
   内側に( )^2を作るので、
   外側のカッコを{ }にする

 = 3{(x + 1)^2 - 1} + 7
  │  ↑  ↑
  └──┴──┘3を中に掛け入れる

 = 3(x + 1)^2 - 3 + 7

 = 3(x + 1)^2 + 4
  ~~~~~~~~~~~~~~

 ⇒(※)x^2の係数でくくるときに、カッコの中のxの項をどうやって求める
かで悩むケースがあります。この例題のようにすぐに分かる場合にはいいので
すが、例えば、

  3x^2 + 5x - 2

というようなときにはどうしたらいいのでしょうか?


  3x^2 + 5x - 2  …(イ)

  3(x^2 + ?) - 2 …(ロ)
  │↑  ↑
  └┴──┘

(イ)の式と(ロ)の式が同じであるためには、(ロ)の式でカッコをはずし
て3を中に掛け入れたときに、元の式に戻らなくてはいけません。つまり、3を
?に掛けて 5x にならなければいけないのです。


 ここで、次のように考えます。

  3を掛けて元に戻る = 3を掛けても元と変わらないようにする

つまり、

  3 × △ × 5x = 5x …(ハ)

とするには、どうすればいいかを考えるのです。上の 3×△ を 5x に掛けて
も 5x のまま変わらなかったということは、3×△ は「1」ということになり
ます。1はいくら掛けても相手を変えませんよね?3×△=1 ですから、(ハ)
の式の△は、3の逆数ということになります。さらに(ロ)と(ハ)を比べる
と、

  3 × ? = 3 × △ × 5x
     ~~     ~~~~~~~~
ですから、(ロ)の?に相当するのは、△ × 5x となります。△は上で考え
たように、3の逆数ですから、結局

     5x
  ? = ──
     3

ということになります。これは、3で割っていると見ることもできますが、x^2
の係数が常に整数とは限りませんので、x^2の係数の逆数をxの項に掛ける、と
考えた方がどんな場合にでも対応できるので、オススメです。もちろん、x^2
の係数が整数のときには、その係数で割る、と考えて差し支えありません。


【例題2】-4x^2 - 3x + 1 を平方完成してください。

  -4x^2 - 3x + 1
              ┌───────────────┐
       3x      │-4でくくっているから、-4で割る│
 = -4(x^2 - ──) + 1  ┌┤or -4の逆数を掛ける      │
     │ -4 ←───┘└───────────────┘
     ├─┘ ┌─────────┐
     │←──┤マイナス÷マイナス│
     │   │でプラス     │
     ↓ 3x └─────────┘
 = -4(x^2 + ──) + 1
   │   4 │
   │    └─────┐外側のカッコを{ }にする
   ↓   3     9 ↓
 = -4{ (x + ──)^2 - ── } + 1 ┐
       8     64     │ -4を{ }の中に掛け入れる
                  │ +1はまだそのまま
      3     9      │ (+1に-4を掛けないように注意!)
 = -4(x + ──)^2 + ── + 1  ←┘
      8     16
          ~~~~~~~~~~┐
      3     25   │最後にこの定数部分を計算して出来上がり
 = -4(x + ──)^2 + ── ←┘
      8     16
  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 さて、いかがでしたでしょうか?平方完成は、係数の具合によって、かなり
メンドクサイ場合も出てきます。ですが、基本となる考え方をしっかりと理解
して、その上できちんと練習すれば、やっていることはワンパターンですから、
スラスラとできるようになると思います。と言うより、スラスラとできるよう
になるまで、練習してください。特に大学受験に数学が必要な人は、ここは時
間をかけずに、サッとできるようになってください。


 繰り返しますが、実は、やっていることはワンパターンでしかないのです。
符号や逆数や気をつけなければならないことは多いですが、基本的な考え方は
1つです。x^2の係数が1以外の場合についての平方完成について、「なぁんだ
いつも同じじゃん!」と思えたら、免許皆伝です(笑)練習問題を下に載せて
おきますので、繰り返し練習してみてください。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

  2.平方完成の練習問題(その2)

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【練習問題】次の式を平方完成してください。

 (1) 2x^2 + 8x + 5

 (2) -x^2 + 4x - 3

 (3) 3x^2 - 3x + 1

 (4) -2x^2 + 7x - 3



 前回の計算に比べて、だいぶ難しくなってきました。ただ、上でも述べまし
たように、基本的な考え方は1つなので、頑張って練習するようにしてくださ
い!



【解答】

 (1) 2x^2 + 8x + 5

  = 2(x^2 + 4x) + 5

  = 2{(x + 2)^2 - 4} + 5

  = 2(x + 2)^2 - 8 + 5

  = 2(x + 2)^2 - 3
   ~~~~~~~~~~~~~~


 (2) -x^2 + 4x - 3

  = -(x^2 - 4x) - 3

  = -{(x - 2)^2 - 4} - 3

  = -(x - 2)^2 + 4 - 3

  = -(x - 2)^2 + 1
   ~~~~~~~~~~~~~~


 (3) 3x^2 - 3x + 1

  = 3(x^2 - x) + 1

       1     1
  = 3{(x - ──)^2 - ──} + 1
       2     4

       1     3
  = 3(x - ──)^2 - ── + 1
       2     4

       1     1
  = 3(x - ──)^2 + ──
       2     4
   ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 (4) -2x^2 + 7x - 3

        7
  = -2(x^2 - ──x) - 3
        2

        7     49
  = -2{(x - ──)^2 - ──} - 3
        4     16

       7     49
  = -2(x - ──)^2 + ── - 3
       4     8

       7     25
  = -2(x - ──)^2 + ──
       4     8
   ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 次回は、係数が分数の場合の練習問題を載せたいと思います。それで、平方
完成はオシマイとします!




─…─編集後記─…───…───…───…───…───…───…──

 宮部みゆきさんの『ブレイブ・ストーリー』を読み終えてしまい、読む本が
なくなってしまいました(T_T)次は『ゲド戦記』でも読もうかとも思ってい
るのですが、よくよく考えてみると映画になったものやこれから映画化される
ものばかり読んでますね(笑)話題作をこんなに読むのは、私としては珍しい
ことです。流行りモノは読みたくならない、というへそ曲がりなところがある
ものですから(^^;
 以前に買って、そのまま読んでいない『影の現象学』(河合隼雄著)を読ん
で、それから『ゲド戦記』を読むことにします。まずは『ゲド戦記』を手に入
れねば!楽天ブックスへGO!(笑)

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