<< 前の記事へ      目次へ戻る      次の記事へ >>

第0037号 平方完成の極意(その2)


☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃  数学マスターへの道〜少なく覚えてとことん使う〜        ┃
┃         第0037号 (2006/06/23)             ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆

 サッカーの日本代表がブラジルに負けてしまいました(T_T)朝早く起きて
応援したのですが、終わってみれば1-4という大差での負け。残念でした。で
も、選手のみなさんは頑張っていたと思います。お疲れ様でしたm(_ _)m


 初めて読む方もいるかと思いますので、このメルマガでの記号の書き方につ
いての約束事を2、3書いておくことにします。


 ☆2乗、3乗などの表し方は、^2、^3とします。
 (例)xの2乗 ⇒ x^2

 ☆添え字は_1、_2といった形で書きます。
 (例)数列の初項、第2項などは ⇒ a_1、a_2



──Contents─────────────────────────────

 1.平方完成の極意(その2)
 2.練習問題

───────────────────────────────────


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

  1.平方完成の極意(その2)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 前回、平方完成がどういうものか、ということについて説明しました。今回
は、前回の最後に約束しました通りに、平方完成の実際の計算方法を説明しま
す。


 x^2 + 6x + 5 を平方完成することを考えてみます。


 x^2 + 6x + 5 を (  )^2 + (定数) の形に変形するのが、平方完成だとい
うことは前回書きました。教科書などでは、カッコの2乗を作るために、

  x^2 + 6x + (?)^2 - (?)^2 + 5

という式を考え、(?)のところに何が入るかを考えましょう!という感じで、
説明しています。これはこれで間違いではないのですが、慣れないと分かりに
くい上に、慣れてもあまりスピーディに平方完成できない、という欠点を持っ
ています。


 とは言え、教科書や参考書などでに書かれている方法ですから、まずはそれ
から説明します。


 カッコの2乗になる因数分解の公式は、

  ○^2 ± 2×○×△ + △^2 = (○ ± △)^2

です。これと x^2 + 6x + (?)^2 を見比べてみると、○に相当するのがxであ
ることが分かります。そうすると、真ん中の項は + 6x ですから

  + 2×○×△
     ↓ ↓
     x  3

というように、△が3だと分かります。ちょうど6の半分ですね。3番目の項は
△^2 ですから、結局(?)が3であれば、

  x^2 + 2×x×3 + 3^2 = (x + 3)^2
          ~~~
という変形ができるのです。したがって、

  x^2 + 6x + 5

 = x^2 + 6x + 3^2 - 3^2 + 5 ←(※)

 = (x + 3)^2 - 9 + 5

 = (x + 3)^2 - 4
  ~~~~~~~~~~~~~
と、なります。


 このように、「何があればカッコの2乗に因数分解できるか」を考えて、そ
れをまず用意し、そして帳尻合わせに引いておく、ということをしているので
す。慣れない人にとって考えにくいのは、(※)の式を作るところです。さら
に、複雑な式になってくると、余計に分かりにくくなってきます。


 そこで、(※)の部分を省いて、一気にその次の式を作ってしまうという、
大胆な方法を紹介したいと思います。


 まず、前回も書いたように、大切なのは (  )^2 の中にxが完全に収まっ
ている、ということですから、焦点をxを含む項にだけ絞って考えることにし
ます。つまり、定数項はあと回しです。(これは上の方法でも同じですね)


 次に、カッコの2乗を作りたいのだから、まずはそれを作ってしまって、そ
れから調整しよう!と考えるのです。


 では、具体的にどうするかを書きます。

  x^2 + 6x + 5 ←定数項はあと回し
  ~~~↑~~~
  この部分に着目して
  ( )^2 を作る

  x^2 + 6x → (x )^2
  ↑      ↑
 ここにx^2が   カッコの中には
 あるのだから ⇒ xが当然あるはず!

 (○ ± △)^2 = ○^2 ± 2×○×△ + △^2

という公式から、(x ± △)^2 を展開すると、xと±△を掛けたものを2倍し
た項が出てきます。(もちろん、△の2乗も出てきますが、それは後で考えま
す)

  x^2 + 6x → (x ± △)^2
     ↑
 xと±△を掛けたものの2倍が
 この +6x になる

と、いうことは、±△は + 6x の係数 +6 の半分ということになります。した
がって、

  x^2 + 6x → (x + 3)^2
     │    ↑
     └────┘
    +6の半分の+3がカッコの中にあるはず!

というように、(  )^2 を作れます。


 しかし、上の式の左側と右側はイコールではありません。なぜなら、先ほど
も書きましたように、右側の式を展開すると、確かに x^2 と +6x は出てきま
すが、それだけでなく、+ 3^2 も出てくるからです!そこで、余分に出てくる
+ 3^2 を引いてやれば、左側と同じになることが分かります。すなわち、

  x^2 + 6x = (x + 3)^2 - 3^2

となります。以上より、最初の式を平方完成する計算は次のようになります。


  x^2 + 6x + 5 …(イ)

 = (x + 3)^2 - 3^2 + 5 …(ロ)

 = (x + 3)^2 - 9 + 5

 = (x + 3)^2 - 4
  ~~~~~~~~~~~~~

 ポイントは、(イ)の式を(ロ)の式に変形する部分です。ですから、しつ
こいようですが、どういう変形をしているのかをもう一度書きます。

    ┌─┐
  x^2 │+6│x + 3
    └─┘  └────┐
     ↓÷2      │定数項の+3は最後につけておく
    ┌─┐   ┌──┐ ↓
 = (x │+3│)^2 -│3^2 │ + 3
    └┬┘   └↑─┘ ~~~
     └3^2が余分┘
      に出てくる
      から引く

 このように、(  )^2 を作りたいのだから、先に作ってしまって、後で余
分なものを引いて調整するのです。これですと、少し練習して慣れてくれば、
思考の流れを止めずに、スラスラと平方完成することができます。特に、分数
が出てきてしまうようなときには、かなりの威力を発揮すると思います。


 次回は、x^2 の係数が1でない場合の平方完成について説明します!




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

  2.練習問題

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


【練習問題】次の式を平方完成してください。

 (1) x^2 + 4x - 1

 (2) x^2 - 8x + 7

 (3) x^2 + 3x + 2



 すべて、上で説明した方法で平方完成できます。(3)はxの1次の項の係数が
奇数なので、分数が出てきます。頑張って計算しましょう!



【解答】

 (1) x^2 + 4x - 1
     ~~~
  = (x + 2)^2 - 2^2 - 1
     ↑   ↑
   +4の半分  4の半分の2乗を引く

  = (x + 2)^2 - 4 - 1

  = (x + 2)^2 - 5
   ~~~~~~~~~~~~~

 (2) x^2 - 8x + 7
     ~~~
  = (x - 4)^2 - 4^2 + 7
     ↑   ↑
   -8の半分  8の半分の2乗を引く

  = (x - 4)^2 - 16 + 7

  = (x - 4)^2 - 9
   ~~~~~~~~~~~~~

 (3) x^2 + 3x + 2
     ~~~
      3     3
  = (x + ──)^2 - (──)^2 + 2
      2     2
      ↑     ↑
    +3の半分  3の半分の2乗を引く

      3     9   8
  = (x + ──)^2 - ── + ──
      2     4   4

      3     1
  = (x + ──)^2 - ──
      2     4
   ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



─…─編集後記─…───…───…───…───…───…───…──

 宮部みゆきさんの『ブレイブ・ストーリー』を読み終えました!前号では、
楽しく読んでます!とお気楽に書いたのですが、その直後からかなり深刻な展
開になっていき、時にはハラハラ、ドキドキしながら、時には胸が締め付けら
れるような思いで、時にはニコニコしながら、読んでいました。先が気になる
ので、どんどん読み進めていってしまいました。読み終えたあと、心地よい感
動が身体の中を満たしていくような気がしました。とにかく面白かったです!

─…───…───…───…───…───…───…───…───…─

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 現役高校数学教師が送る「数学マスターへの道」(毎週月・水・金発行)
 発行システム:『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/
 配信中止はこちらから→ http://www.mag2.com/m/0000184672.html
 ご意見・ご感想などはこちらへお願いします。
 → E-Mail math_master@hotmail.co.jp
 → BLOG  http://smi-teacher.seesaa.net/
 バックナンバーはこちら
 → http://mathemaster.com/magback_index.htm
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


<< 前の記事へ      目次へ戻る      次の記事へ >>