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第0036号 平方完成の極意(その1)


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┃  数学マスターへの道〜少なく覚えてとことん使う〜        ┃
┃         第0036号 (2006/06/19)             ┃
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 第0035号は金曜日の発行予定でしたが、実際には日付が変わってしまってか
らの送信になってしまいました。実は、、、メルマガの原稿を書いている途中
で、うつらうつらとしてしまい、気がついたら12時を過ぎてしまっていたので
す(涙)慌てて、原稿を完成させて、間違いがないかをチェックして送信しま
した。と、いうことで、やや遅れての発行になってしまったのです。以上、前
号の発行のウラ話でした(笑)


 初めて読む方もいるかと思いますので、このメルマガでの記号の書き方につ
いての約束事を2、3書いておくことにします。


 ☆2乗、3乗などの表し方は、^2、^3とします。
 (例)xの2乗 ⇒ x^2

 ☆添え字は_1、_2といった形で書きます。
 (例)数列の初項、第2項などは ⇒ a_1、a_2



──Contents─────────────────────────────

 1.平方完成の極意(その1)
 2.数学は暗記科目?

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  1.平方完成の極意(その1)

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 平方完成と呼ばれる技があります。いろいろな場面で使われますが、代表的
なものとしては、

  一、解の公式を導くとき
  一、2次関数のグラフをかくとき、最大値・最小値を求めるとき
  一、あるタイプの不等式の証明

などが挙げられます。具体的には、2次関数の場合を例として挙げますと、

  y = ax^2 + bx + c …(イ)

という式を

  y = a(x - p)^2 + q …(ロ)

の形に変形することを指します。


 この「平方完成」が何を狙ったものなのかを理解しているのと、そうでない
のとでは、この技の理解や習得、そして利用に大きな差が出てくるように思い
ます。


 タイトルを「平方完成の極意」などと大げさにしてしまいましたが(笑)、
2次関数を学習している段階で、この平方完成が十分にできないためにその後
の学習に支障を来す生徒がいますので、基本的な考え方とちょっとしたコツを
紹介しようと思います。


 まず、形の上での特徴をしっかりつかんでください。平方完成と言いますが、
(ロ)の式を見ると、式全体が (  )^2 という完全平方式になっているわけ
ではありません。では、なぜ平方「完成」などと言うのでしょうか?(ロ)の
式では、変数であるxが (  )^2 の中にすべて収まっており、カッコの外に
はxの項は全くありません。すなわち、定数はともかく、変数が (  )^2 の
中に完全に収まっている状態、これが「平方完成」の姿なのです。


 では、変数が (  )^2 の中に完全に収まっていると、何がいいのでしょう
か?「変数」とは、いろいろな値を取り得る文字を指します。つまり、特別な
制限がなければ、プラスの値もマイナスの値も取り得る、言い換えればそこに
どんな値が入っているかは分からないということです。そんな、いろんな値が
考えられる「変数」でも、ある特殊なケースでは、どういう値を取るのか、多
少なりとも情報を得ることができます。


 この平方完成では、変数が (  )^2 の中にすべて収まっています。という
ことは、変数がどんな値を取ったとしても、最後には2乗されるわけですから、
カッコの中がプラスであろうがマイナスであろうが、すべて0以上の値となる
ことが分かります!


 たとえば、次のような式があるとします。(x、yは実数とします)

  P = (x + 3)^2 + (y - 5)^2 …(ハ)
    ~~~~↑~~~  ~~~~↑~~~
     (ニ)   (ホ)

(ハ)の式は、x、yの値によってPの値がさまざまに変化しますが、それでも
1つだけはっきりと言えることがあります。それは、Pはx、yの値が何である
かに関わらず、必ず0以上の数であるということです。(ニ)、(ホ)はどち
らも2乗された数なので0以上です。ですから、その合計は当然0以上となり
ますよね。


 このように、平方完成することによって、そのままでは分からなかったこと
や、できなかった計算ができるようになったりします。もちろん、2次方程式
の解の公式を導く場合と、2次関数など変数を扱う場合とでは、目指すものが
違いますので、平方完成の後の計算や使い方などは変わってきます。ただ、い
ずれにしても、バラバラだった変数の2次の項と1次の項を1つのカッコの中
に収めてしまうことができた、それによって扱いが楽になった、というところ
はどちらにも共通してあります。そこのところを、心に留めておいてください。


 次号で、平方完成の実際の計算方法を説明することにします。




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  2.数学は暗記科目?

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 世に出ている本の中には、「数学は暗記科目である」と言っているものがあ
ります。これは「暗記科目」の捉え方が人によって違うと思いますので、一概
に否定することは出来ないと思いますが、基本となる例題をすべて暗記してお
けば、大抵の問題は解けるようになる、という意味で、「暗記科目」だという
のであれば、それは間違いだと思います。例題の解き方を「覚える」にしても、
そこに「理解」が伴わなければ、全く同じ問題でない限り、解けないと思いま
すし、ましてや応用はきかないと思います。


 ですから、覚えるだけで何でもできる、という意味で「暗記科目」と言うの
であれば、私はそれは「違う」と否定します。(ただ、世の中に覚えるだけで
すべての問題が解ける「暗記科目」が存在するとは思えません。そこには、や
はり何らかの形で、「理解」が必要になると思います)


 ところで、このような話を書きますと、今度は「覚える」ことは必要ないん
だ、「理解」すればOKだ、という両極端のような意見が出てきます。私は、
これも誤りだと思います。これも「理解」ということをどう解釈するかで、意
見の分かれるところだとは思いますが、とりあえずここでは、授業などで説明
されたことが分かった、ナットクした、という意味で考えたいと思います。


 説明されたことを、その場で分かったとしても、それは受動的な「理解」で
あるため、自分で再現する、あるいは自分で別の問題を解くことができるとは
限らないでしょう。また、説明されたことを後で忘れてしまったとしたら、た
とえその時は「理解」したとしても、後に残るものは少ないと思うのです。


 ですから、数学の学習では「理解」することと同時に、「覚える」ことや、
繰り返し「練習」することが必要であると思うのです。つまり、当たり前の結
論のように思えますが、「理解だけ」や「暗記だけ」ではダメだということで
す。当たり前のようなのですが、不思議と「数学は覚えることが大事だ」とか
「いいや、理解することこそ大事だ」というような議論が繰り返されたりしま
す。答えは、「どちらも大事」なのです(笑)


 数学教育の大学院を修了した後、ちょっとした理由から、大学の学部生の数
学の授業を受けさせてもらったことがあります。そのときに、教えてくださっ
ていた教授が、繰り返し「理解して、覚える」ことが大事だと、おっしゃられ
ていました。その講義を1年間通して受講させていただいて、その重要性を自
らの経験をもって実感することができました。なぜなら、それを愚直に受け取
って実践した私は、すべての試験でほぼ満点を取ることができましたし、授業
を理解することも最後まで苦痛ではありませんでした。しかし、受講していた
大学生の中で、それを怠っていた人たちは、試験で全然出来ていなかったので
す。数学を専門とする数学科の学生さんたちですよ!ちなみに国立大学でした
から、センター試験くらいであれば、合格者の平均点は9割にもなろうかとい
う人たちであるにも拘わらず、です!ちなみに、私も大学生の頃、数学の勉強
をサボっていたときには、数学の授業が分からず、かなり苦労したことがあり
ます(汗)


 最先端の数学の研究の場では、また違った意見もあるかとは思いますが、中
学や高校で数学を学習する立場の人にとっては、「理解して、覚える」すなわ
ち、「理解」と「反復練習」、「応用する練習」は大切であると思います。今
後、数学の勉強をする際には、このことを念頭において勉強に励んでいただき
たいと思います。




─…─編集後記─…───…───…───…───…───…───…──

 宮部みゆきさんの『ブレイブ・ストーリー』を読み始めたということを前に
書いたと思いますが、ちょうど『ブレイブ・ストーリー 中』(角川文庫)の
真ん中あたりを読んでいます。最初はファンタジーっぽくなかったのですが、
今読んでいるところは、まさにファンタジーというか、RPGの世界に迷い込
んだというか、そんな感じです。いろいろなところに宮部ワールドが出てきて
いて、楽しく読んでいます。『ハリー・ポッター』や『ダヴィンチ・コード』
とはまた違った世界を楽しんでいます。これぞ文学の醍醐味ですね!ちょっと
大きく出すぎましたか?(笑)

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