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第0033号 置き換えを利用した因数分解


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┃  数学マスターへの道〜少なく覚えてとことん使う〜        ┃
┃         第0033号 (2006/05/31)             ┃
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 教育実習生が来ています。私が担当している実習生は、数学ではなく情報で
す。今週・来週と実習生の指導があるため、メルマガの発行が不定期になるか
もしれません。そのときには、ご容赦下さい。m(_ _)m


 初めて読む方もいるかと思いますので、このメルマガでの記号の書き方につ
いての約束事を2、3書いておくことにします。


 ☆2乗、3乗などの表し方は、^2、^3とします。
 (例)xの2乗 ⇒ x^2

 ☆添え字は_1、_2といった形で書きます。
 (例)数列の初項、第2項などは ⇒ a_1、a_2



──Contents─────────────────────────────

 1.置き換えを利用した因数分解
 2.練習問題

───────────────────────────────────


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  1.置き換えを利用した因数分解

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 今回は置き換えを利用した因数分解を扱いたいと思います。基本問題とちょ
っとした応用の2つを取り上げます。


【例題1】(x^2 + x)^2 + (x^2 + x) - 6 を因数分解してください。

 こういった式が与えられたときに、つい焦って展開を始めてしまう人がいま
すが、まずは式全体の特徴をつかむようにしましょう。そうすると、x^2 + x
が2つあることに気付きます。この x^2 + x を別の文字で置き換えてみると、
どういう構造になっているかがよく分かります。


  x^2 + x = A とおくと、

  (x^2 + x)^2 + (x^2 + x) - 6
   ~~~~~~~    ~~~~~~~
  = A^2 - A - 6 ←Aについての2次式になっている!

  = (A - 2)(A + 3)       ─┐
                  │A を x^2 + x に戻す!
  = (x^2 + x - 2)(x^2 + x + 3) ←┘
                 ※かっこの中が2次式のときはさらに
  = (x - 1)(x + 2)(x^2 + x + 3)  因数分解できるかどうかを考える!


 上の因数分解で、最後の部分については、左側のカッコ内の2次式はさらに
因数分解できますが、右側のカッコ内の2次式はこれ以上因数分解できません。
したがって、右側のカッコ内はそのままでOKです。



【例題2】(x + 2)(x + 3)(x + 4)(x + 5) - 24 を因数分解してください。

 例題1がうまくいったのは、x^2 + x という共通部分がうまい具合にあった
からです。では、この問題ではどうでしょうか?与えられた式のままの状態で
は、共通の部分はありません。ところが、4つあるカッコをうまく2つずつの
ペアにして展開をしてやると、共通の部分が出てきます。さて、どう組み合わ
せればいいでしょうか?


 こういうときは、試しにやってみる、というのも大事です。最初の2つと後
半の2つをペアにして展開してみましょう。


  (x + 2)(x + 3) = x^2 + 5x + 6

  (x + 4)(x + 5) = x^2 + 9x + 20


残念ながら期待したような共通部分は出てきませんでした。では、次に外側の
2つと、内側の2つというペアを作って、展開してみましょう。


  (x + 2)(x + 5) = x^2 + 7x + 10
           ~~~~~~~~
  (x + 3)(x + 4) = x^2 + 7x + 12
           ~~~~~~~~


はい。x^2 + 7x が共通のものとして出てきました。では、これらを踏まえた
上で因数分解に取り掛かりましょう。


   (x + 2)(x + 3)(x + 4)(x + 5) - 24

  = (x + 2)(x + 5)(x + 3)(x + 4) - 24

  = (x^2 + 7x + 10)(x^2 + 7x + 12) - 24
   ~~~~~~~~    ~~~~~~~~
 ここで、x^2 + 7x = A とおくと、

 与式 = (A + 10)(A + 12) - 24

  = A^2 + 22A + 120 - 24

  = A^2 + 22A + 96

  = (A + 6)(A + 16)

  = (x^2 + 7x + 6)(x^2 + 7x + 16)

  = (x + 1)(x + 6)(x^2 + 7x + 16)


 ここでは、最初の4つのカッコをどう組み合わせて展開すればうまくいくか
を考える必要があります。パズルのつもりで、あれこれと試してみてください。




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  2.練習問題

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【練習問題】次の式を因数分解してください。

 (1) (a + b)^2 - 4(a + b) + 3

 (2) (x^2 - x + 1)(x^2 - x + 2) - 12

 (3) (x + 2)(x + 3)(x - 4)(x - 5) - 144



 うまく共通部分を見つけたり、作り出したりして因数分解してください。



【解答】

 (1) (a + b)^2 - 4(a + b) + 3
    ~~~~~    ~~~~~
  a + b = A とおくと、

   与式

  = A^2 - 4A + 3

  = (A - 3)(A - 1)

  = (a + b - 3)(a + b - 1)
   ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 (2) (x^2 - x + 1)(x^2 - x + 2) - 12

  x^2 - x = A とおくと、

   与式

  = (A + 1)(A + 2) - 12

  = A^2 + 3A + 2 -12

  = A^2 + 3A - 10

  = (A - 2)(A + 5)

  = (x^2 - x - 2)(x^2 - x + 5)

  = (x + 1)(x - 2)(x^2 - x + 5)
   ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 (3) (x + 2)(x + 3)(x - 4)(x - 5) - 144

  = (x + 2)(x - 4)(x + 3)(x - 5) - 144

  = (x^2 - 2x - 8)(x^2 - 2x - 15) - 144

  x^2 - 2x = A とおくと、

   与式

  = (A - 8)(A - 15) - 144

  = A^2 - 23A + 120 - 144

  = A^2 - 23A - 24

  = (A + 1)(A - 24)

  = (x^2 - 2x + 1)(x^2 - 2x - 24)

  = (x - 1)^2 (x + 4)(x - 6)
   ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




─…─編集後記─…───…───…───…───…───…───…──

 『ハリーポッターと謎のプリンス』をこの前から読んでいますが、下巻の真
ん中あたりまで来ました。『不死鳥の騎士団』とはまた違った緊迫感がありま
す。この先どうなるのか、非常に気になります(笑)これを書き終えたら、続
きを読むことにします!

─…───…───…───…───…───…───…───…───…─

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