第0028号 平方完成の極意(その2)
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┃ 数学マスターへの道〜少なく覚えてとことん使う〜 ┃
┃ 第0028号 (2006/05/17) ┃
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初めて読む方もいるかと思いますので、このメルマガでの記号の書き方につ
いての約束事を2、3書いておくことにします。
☆2乗、3乗などの表し方は、^2、^3とします。
(例)xの2乗 ⇒ x^2
☆添え字は_1、_2といった形で書きます。
(例)数列の初項、第2項などは ⇒ a_1、a_2
──Contents─────────────────────────────
1.少し複雑な数列の和
2.文字式を見るときの気持ち(その4)
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1.平方完成の極意(その2)
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前号で等比数列の和の公式を導きましたので、そのアイディアを利用して解
く問題を紹介したいと思います。ただ、この問題は、かなり面倒くさいので、
数学が苦手な人にとっては、ややツライ問題だと思います。
問 次の数列の和Sを求めてください。(ただし、x≠1)
S = 1 + 2x + 3x^2 + 4x^3 + … + nx^(n-1)
これは、係数が等差数列で、文字の部分が等比数列という、等差数列と等比
数列の複合形です。数列が嫌いな人にとっては、見るのもオゾマシイ(笑)と
いう代物です。
等差数列と等比数列の融合型なのであれば、それらで使ったアイディアが使
えるのではないか、というのは素朴な発想です。まず、等差数列の和で使った
アイディアにしたがって、項の順番を逆にして足してみます。しかし、どうも
うまくいきません。そこで、今度は等比数列の和で使ったアイディアを試して
みます。
S = 1 + 2x + 3x^2 + 4x^3 + … + nx^(n-1) …(イ)
(イ)の両辺にxを掛けます。
xS = x + 2x^2 + 3x^3 + 4x^4 + … + nx^n …(ロ)
次に(イ)−(ロ)を計算します。(ここまでは同じですね)
S = 1 + 2x + 3x^2 + 4x^3 + … + nx^(n-1)
−)xS = x + 2x^2 + 3x^3 + … + (n-1)x^(n-1) + nx^n
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S-xS = 1 + x + x^2 + x^3 + … + x^(n-1) - nx^n
(1-x)S = 1 + x + x^2 + x^3 + … + x^(n-1) - nx^n
~~~~~~~~~~~~~~↑~~~~~~~~~~~~~~~~
初項1、公比xの等比数列の和
等比数列の和の公式では縦に並んだ部分が同じになったので、引き算をした
ときに全部うまく消えたのですが、今回は消えません。ですが、係数が等差数
列になっているので、ずらして引き算をすると、係数がすべて同じ(公差)に
なるのです。したがって、上の波線部分は単純な等比数列の和になります。
(1-x)S = 1 + x + x^2 + x^3 + … + x^(n-1) - nx^n
1 - x^n
= ───── - nx^n
1 - x
1 - x^n n(1-x)x^n
= ───── - ──────
1 - x 1 - x
1 - x^n - nx^n - nx^(n+1)
= ─────────────
1 - x
1 - (n+1)x^n - nx^(n+1)
= ─────────────
1 - x
最後に両辺を 1-x で割って、次の式を得ます。
1 - (n+1)x^n - nx^(n+1)
∴ S = ────────────
(1 -x)^2
計算はメンドウですが、発想そのものは等比数列の和を導いたときと同じで
すので、受験生であればできるようになっておいてほしい問題の1つですね。
受験生でなければ、等比数列と同じアイディアが使われている、ということが
確認できればOKです。
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2.文字式を見るときの気持ち(その4)
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文字は便利なものですが、最大の難点は具体的な数値が見えづらいというこ
とです。具体的な数値の代わりに文字を用いているわけですから、当たり前の
ことなのですが、逆に言うと、その辺を自分で強く意識しておかなければいけ
ないということになります。
具体的な例を挙げてみます。
ルートの中がマイナスになることは、実数の範囲ではありえません。どんな
実数も2乗すると0以上の値になるからです。2乗してマイナスになる数は実数
の範囲ではあり得ない、ということですね。では、次のような式があったらど
うでしょうか?
√-a
少し見づらいですが、ルートの中に-aが入っています。「ルートの中がマイ
ナスでもいいの?」という疑問が湧いてきます。もちろん、aの値がプラスで
あれば、-aはマイナスの値になりますので、マズイわけです。
たとえば、a=4 のとき、-a=-4 ですから、√-a = √-4 でダメです。
ところが、そもそもaの値がマイナスだとしたらどうでしょうか?-aはaに-1
を掛けたのと同じことですから、もともとaの値がマイナスであれば、
マイナス×マイナス
で、-aはプラスの値となります。したがって、ルートの中がプラスですので、
これは問題なし、と言えます。
たとえば、a=-2 のとき、-a = -(-2) = 2 ですから、√-a = √2 となって、
これはOKです!
-a という式を見たときに、-3 のような数と同じように見てしまいがちにな
ってしまいます。これは、なかなか乗り越えにくい壁なのですが、文字が使わ
れているときには、注意して見るようにしてほしいと思います。とは言っても、
年がら年中、気をつけて見るのも大変ですから、次のようなときに特に注意し
て見るようにしましょう。
■ プラスかマイナスかで扱いが変わるとき
■ 0かそうでないかで扱いが変わるとき
具体的には、
■ ルートの中
⇒ ルートの中は0以上でなければならない
■ 対数の真数(対数 log_a ○ で○の部分)
⇒ 真数はプラスでなければならない(0もダメ!)
■ 分数式の分母
⇒ 分母が0になってはいけない
■ 方程式(等式)の両辺を文字で割るとき
⇒ 0で割ることはできない
■ 不等式の両辺を文字で割るとき
⇒ 0では割れない&マイナスの数で割ると不等号の向きが変わる
といったような場合です。他にもありますが、上で挙げたところは十分注意し
なければならないので、まずはここに押さえておいてほしいと思います。
─…─編集後記─…───…───…───…───…───…───…──
藤原正彦先生の『国家の品格』を読んでいます。本のタイトルを見て、ナン
だか難しそうだな、と思っていたのですが、全然そんなことはなく、とても面
白い内容です。「そうだそうだ」と共感したり、「え?こんなこと書いちゃっ
てもいいの?」と驚いたりと、とても楽しく読んでいます。小学校での英語教
育反対など、私が普段から言っていることと同じで、何だか嬉しくなってしま
いました。まだ半分くらいまでしか読んでいないので、早く続きが読みたいと
思っています。実は、ハリーポッターの最新刊も手に入れました!そちらも早
く読みたい!!(笑)
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