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第0026号 等比数列の一般項


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┃  数学マスターへの道〜少なく覚えてとことん使う〜        ┃
┃         第0026号 (2006/05/10)             ┃
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 みなさんは連休をどのようにお過ごしでしたか?私は…、特別出かけること
もせず、家事を手伝ったり、昼寝をしたり、ハリーポッターのDVD(炎のゴブ
レット)を観たりと、のんびりと過ごすことができました。何より、睡眠不足
を解消できたのが大きいですね(^^)そのあとに待っていた仕事の山は余計で
したが…(涙)



──Contents─────────────────────────────

 1.等比数列の一般項
 2.文字式を見るときの気持ち(その2)

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  1.等比数列の一般項

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 第25号で等差数列の一般項を導きました。それにならって、今回は等比数列
の一般項を求めてみたいと思います。


 等差数列のときと同じように、まずは等比数列とはどんなものかについて説
明します。


 等差数列は、隣との「差」が一定(すべて等しい)であるような数列でした。
それと同じく、等比数列は隣との「比」が一定(すべて等しい)であるような
数列のことです。ここでやはり問題になるのは、隣との比って何?ということ
でしょう。等差数列のときには、ある項からその1つ前の項を引いたものが、
「隣との差」でした。今回は「比」ですから、引き算ではなく、「割り算」を
します。つまり、ある項をその1つ前の項で割ったものが隣との「比」です。


 ちなみに、「比の値」と「割り算」は密接な関係があります。いえ、むしろ
同じものと言ったほうが良いかもしれません。

  3:5 ⇔ 3/5 ⇔ 3÷5

このような関係があります。記号も良く見れば似ていますよね?「:」と「÷」
は真ん中に棒が一本入っただけです。以前、この記号は元々同じところから発
生したという話を聞いたことがありますが、その真偽については確かめていま
せん。スミマセン(>_<)


 等差数列では一定である「隣との差」を「公差」と呼びましたが、今回の等
比数列では一定である「隣との比」を、、、さて何と呼ぶでしょう?はい、そ
の通りです。「公比」と呼びます。


 まず、前回同様に具体的な例で考えてみましょう。次のような数列があると
ます。

  4, 12, 36, 108, …, a_n, …
  └┘└┘└┘└┘… └┘
  ×3 ×3 ×3 ×3 … ×3 …

公比はすでに上にも書いてありますが、

  12÷4=3
  36÷12=3
  108÷36=3
   …

という具合に、3であることが分かります。これは、ある項に3を掛けると、そ
の次の項が求められるということです。


 さて、上の形ですがどこかで見たことがありませんか?


 そうですね、前号で書きました「等差数列」と同じ「形」になっています。
この「形」が同じというのは意外と重要なことなのです。


 等差数列と「形」が同じですから、第n項を求めるのに何個3を掛ければよい
か?という問いに対する答えが同じになります。つまり、第n項を求めるのに
は n-1 個だけ公比の3を掛けてやればよいのです。


 これは次のようなものと同じ「構造」だと考えられます。一番左の○の位置
にいる人が、○に順々に飛び移って行くことにします。n番目の○にたどり着
くには、何回飛べばよいでしょうか?

 最初はここにいる  n番目の○
  ↓         ↓
  ○ ○ ○ ○ … ○
  └┘└┘└┘└┘…└┘
   1回 2回 3回 4回… ?回

これも等差数列や等比数列と同じ「形」をしています。1回飛んだときに、初
めて2個目の○に移れます。つまり並んでいる○の個数より1少ない回数だけ飛
び移ればよいわけです。ですから、n番目の○にたどり着くには n-1 回飛べば
よいのです。


 さて、以上のことから、等比数列の一般項を求めることにしましょう。

  a_n = 4×3×3×…×3 = 4×3^(n-1)
      └────┘
        n-1個

これが上の数列の一般項となります。一般に、初項a、公比rである等比数列の
一般項は、

  a_n = a×r^(n-1)

となります。これも、作り方を理解して覚えておけば、忘れにくいと思います。




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  2.文字式を見るときの気持ち(その2)

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 文字を使うときには、暗黙の了解というか、数学の中での「慣習」がありま
す。


☆a,b,c,…など前半の文字は、定数を表すのに使う

☆x,y,zなど後半の文字は、未知数や変数を表すのに使う

☆ある特定の文字については、特別な意味で使うこともある
(例)n or N ⇒ 自然数を表すのに使う
   l or L ⇒ 長さを表すのに使う
   S ⇒ 面積、和を表すのに使う
   V ⇒ 体積を表すのに使う
   O ⇒ 原点、中心、零行列を表すのに使う
   大文字のアルファベット ⇒ 行列を表すのに使う
   などなど…


 ただ、文字が定数を表しているのか、変数を表しているのかについては、固
定的なものではありません。定数を変数や未知数として見たり、変数であるの
に定数のように扱ったりするなど、問題や場面によって変わってきます。


 と言うことは、文字を使う人がどういうつもりでその文字を使おうとしてい
るのかが、重要になってくるわけです。


 文字式の「次数」についても、どの文字に注目するかで変わってきます。教
科書などでは、特定の文字に注目したときの次数を求める問題が載っています
が、なぜそんなことを考えるのかについての説明はほとんどありません。もち
ろん、ある程度先まで進まなければ、なかなかそのメリットを感じることはで
きません。しかし、場合によっては特定の文字に注目して次数を考えることが
ある、という経験を中学時代にすでにしているのです。そのあたりの話とから
めて説明する方が納得しやすいように思います。


 たとえば、授業では「次数」の部分について説明したあと、こんな質問をす
ることにしています。

  ax^2+bx+c=0 の左辺は何次式ですか?

けっこう簡単に引っ掛かってくれます(笑)特別に指示をしなければ、左辺は
3次式です。ですが、2次式ととっさに答える生徒が意外と多いです。素直です
よね(^^)質問が意地悪だとも言えますが…(苦笑)この式は、2次方程式を
表すときによく使います。でも、それは「特定の文字xに着目した場合」の話
です。a,b,c,xの文字に特別な意味を持たせなければ、これは3次式です。a,b,
cを定数として見て、xを変数(あるいは未知数)として考えれば、これはxに
ついての2次式と見ることができます。


 ただ、2次式という返答自体は決して悪い間違いではありません。むしろ歓
迎すべき間違いと言えます。なぜなら、2次式と見たということは、上の式の
左辺を特定の文字xについての式とみなしているということであり、a,b,cとx
との役割を区別して見ることができているということになるからです。


 単にそれを今まで意識していなかったというだけの話なのです。それを意識
させることで、文字式に対する認識を深め、見方を柔軟にしてあげることが、
この単元でのれらいではないかと私は考えています。そして、文字に対する見
方が自由になることで、問題への取り組みや数学の内容についての理解が進ん
でいくと期待しています。逆に言えば、文字に対する見方が不自由であるため
に、理解が十分にできない、ということが起きてしまうこともあるのです。




─…─編集後記─…───…───…───…───…───…───…──

 第25号から10日近く空いてしまいました。ここのところ、学校のコンピュー
タ関係で忙しく、メルマガを完成させることができませんでした。今年は3年
生を担当している(担任&授業担当)ので、ひょっとしたらこれからもメルマ
ガを発行できない時があるかもしれません。なるべくそうならないように努力
しますが、もし発行できないときがありましたら、そのときはご容赦いただき
たいと思いますm(_ _)m

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