<< 前の記事へ      目次へ戻る      次の記事へ >>

第0020号 tanの加法定理の覚え方


☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃  数学マスターへの道〜少なく覚えてとことん使う〜        ┃
┃         第0020号 (2006/04/17)             ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆

 昨日(4月16日)情報処理技術者の試験を受けてきました。テクニカルエン
ジニアの情報セキュリティです。試験直前もほとんど勉強ができなかったので
結果は火を見るより明らかです(T_T)さきほど解答速報を確認しました。午
前がぴったり6割でした。この時点で終わったな、という感じですね(笑)来
年また頑張ります!



──Contents─────────────────────────────

 1.tanの加法定理の覚え方
 2.Σの公式(その1)

───────────────────────────────────


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

  1.tanの加法定理の覚え方

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 第19号でtanの加法定理を導きました。さてtanの加法定理を覚えていますで
しょうか?前号では私なりの「覚え方」は、あえて書きませんでした。あなた
自身が覚えやすい方法を、自分で見つけてほしいと思ったからです。ですから、
自分で見つけるからいいよ!という方は、この先は読み飛ばしてください。ち
ょっと参考にしてみようかな、と思う方は、試しに読んでみてください。


 第18号で紹介したtanの公式もそうでしたが、正直なところ、私はtanの加法
定理をきちんとは覚えていません。覚えているのは、

  (1) 分数になっていたこと
   (tanとsin、cosの関係式が分数だから、と関連させて覚えています)

  (2) パーツは1、tanα、tanβ

  (3) tanα、tanβについては足したもの、引いたものと掛けたもの
    →つまり、tanα+tanβ or tanα-tanβ と tanαtanβ

  (4) 分母と分子の項は2つずつ

 これだけ覚えていれば、式を「思い出す」ことはそう難しいことではありま
せん。(2)〜(4)から分母と分子は

 tanα+tanβ or tanα-tanβ と 1+tanαtanβ or 1-tanαtanβ

だと分かります。あとはこの組み合わせがどうなっているか?です。分母はど
れ分子はどれか?この手の分数の形になる公式などは、大体は覚えていても、
分母と分子、どっちがどっちだか分からなくなったり、不安になったりするも
のなんですよね。。。そこで、第19号でtanの加法定理を導いたことが効いて
くるのです!どのように導きましたっけ?あらすじだけでいいですから思い出
してください。


 そうですね。まずtan(α+β)をsin(α+β)、cos(α+β)で表し、次にsin、
cosの加法定理を使って変形をしたんでしたね。そして、肝心なのは、もう一
度tanに戻すために、cosαcosβで分母と分子を割りました。これだけ覚えて
いれば十分です。


 tanとsin、cosの関係式では、

  分子…sin、分母…cos

でした。ということは、tan(α+β)をsin、cosで表すと、

  分子…sin(α+β)、分母…cos(α+β)

となります。では、分母から考えます。cos(α+β)を加法定理で分解すると、
真ん中の符号は何でしたっけ?そうです、「サンドイッチ」で、内側は「−」
でした。そして、cos(α+β)の最初の項は、cosαcosβです。これを、上で書
いたように、cosαcosβで割ると、、、1ですよね!


 と、いうことで、分母の出だしは、「1−」だということを思い出します。
そうすると、(項は2つだけですから)自ずと分母は

  1- tanαtanβ

となります。では、分子は?…分母がtanαとtanβの掛け算なんですから、分
子は足し算か引き算のどちらかです。


 で、sin(α+β)の加法定理の真ん中の符号です。はい。「+」でした。と、
いうことは、分子は

  tanα + tanβ

に決定!(笑)よって、次のtan(α+β)の加法定理の完成です。


【tan(α+β)の加法定理】

          tanα + tanβ
  tan(α+β) = ────────
         1 - tanαtanβ


 tan(α-β)についても同様に考えると、次の式が作れますが、tan(α+β)の
式を覚えていれば、違うのは符号だけですから、そこだけピンポイントで確認
すればOKです。


【tan(α-β)の加法定理】

     sin(α-β)の真ん中の符号がマイナスだから、ここがマイナス
            ↓
          tanα - tanβ
  tan(α-β) = ────────
         1 + tanαtanβ
          ↑
     cos(α-β)の真ん中の符号がプラスだから、ここがプラス


 今回の話は、あくまでも覚え方(思い出し方?)ですから、なぜこういう式
になるのかの説明ではありません。そこについては、前号での導き方を参照し
て下さい。また、分母と分子は符号が逆であることを覚えていれば、もう少し
ラクに思い出せると思います!




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

  2.Σの公式(その1)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 Σの公式は全部で5つ覚えてもらいます。今回は次の2つです。


 (1) n
   Σc = ?
   k=1

 (2) n
   Σk = ?
   k=1


 (1)を前号でやったように、和の形に書き直してみます。

  n
  Σc = c + c + c + … + c
  k=1 └───┬────┘
       全部でn個

前回お話したΣの意味はここまででした。今回は、この結果がどうなるかを考
えよう、というのがテーマです。


 同じ数を複数足すときに、あなたはどうしますか?たとえば、3を100個足し
なさい、と言われたら?3を100個実際に足しはしませんよね?どうやって計算
するか…。そうです、3×100=300と計算すると思います。同じ数を複数足すと
きには、掛け算を使えば簡単にその結果を求めることができます。


 と、いうことで、

  n
  Σc = c + c + c + … + c = cn
  k=1 └───┬────┘ ~~~~
       全部でn個

となります。これを最初と終わりをくっつけて、「公式」にします。すなわち

  n
  Σc = cn
  k=1

です。


 ここで気をつけて欲しいのは、右辺が cn となったのは、Σとは関係ない、
ということです。つまり、Σのせいで c + c + c + … + c = cn となったの
かというと、違いますよね?「cをn個足したから」、「同じ数を繰り返し足す
ときには掛け算で計算できるから」、cとnを掛けてcnとなったわけです。


 そりゃ元をただせば、Σがあったから足し算が出てきたわけで、何の関係も
ないと言ったらウソになりますが…(笑)


 では、もう1つ。

   n
   Σk = 1 + 2 + 3 + 4 + … + n
   k=1

こちらはどうでしょう。1 , 2 , 3 , 4 , … , n という数列は、初項1、公差
1の等差数列です。ですから、その和は「等差数列の和の公式」から、

   n               1
   Σk = 1 + 2 + 3 + 4 + … + n = ─n(n+1)
   k=1              2

となるのです。ここで、「等差数列の和の公式」については、説明していませ
んので、もし分からなければ、ふ〜ん、そういうのがあるんだ、ぐらいに考え
て軽く流して下さい(笑)大事なのは、Σとは別の所に何らかの理屈があって、
それを使ったら、この公式が出てきたんだ、という事実を受け止めることなの
です。ただ、等差数列や等比数列の和の公式を導く過程には、大事なアイデア
が含まれていますので、それは別の機会に説明します。


 さて、まとめです。今日はΣの公式を2つ紹介しました。これをしっかりと
覚えてください。これは何も見ないで書けるように練習してください。もちろ
ん、Σの部分からです!そして、Σは足し算をしているんだ、ということを頭
に思い浮かべながら、Σの式を書いてください。(これは、私が今まで見てき
たどの教科書・参考書にも書いていませんでしたね)つまり、自分の頭の中に
Σは足し算、というイメージを定着させるのです。これは意外と大事なことな
ので、ぜひやってみてください!


【Σの公式(その1)】

 (1) n
   Σc = cn
   k=1

 (2) n   1
   Σk = ─n(n+1)
   k=1  2




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 現役高校数学教師が送る「数学マスターへの道」(毎週月・水・金発行)
 発行システム:『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/
 配信中止はこちらから→ http://www.mag2.com/m/0000184672.html
 ご意見・ご感想などはこちらへお願いします。
 → E-Mail math_master@hotmail.co.jp
 → BLOG  http://sora.mathemaster.com/
 バックナンバーはこちら
 → http://mathemaster.com/magback_index.htm
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


<< 前の記事へ      目次へ戻る      次の記事へ >>