第0019号 tanの加法定理
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┃ 数学マスターへの道〜少なく覚えてとことん使う〜 ┃
┃ 第0019号 (2006/04/14) ┃
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今日から本格的に授業が始まりました。数学IIIの最初は数列の極限からで
す。生徒達に聞いたら、案の定「数列はキライ」「Σもキライ」という答えが
返ってきました。Σの不人気、相当ですね(笑)
──Contents─────────────────────────────
1.tanの加法定理
2.Σの不幸
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1.tanの加法定理
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tanの加法定理も覚えにくい式の1つです。しかも、やはり「忘れた頃にや
ってくる」タイプの式です(笑)ですから、tanの加法定理は自分で導けるよ
うになっておきましょう。見た目ほど難しくありませんので、これも自分でや
ってみて下さい。
メルマガ第15号で紹介したsin、cosの加法定理と、第17号で紹介した三角関
数の基本公式を組み合わせれば導けます。では、実際にやってみましょう。
【tanの加法定理】
tanα + tanβ
tan(α+β) = ────────
1 - tanαtanβ
tanα - tanβ
tan(α-β) = ────────
1 + tanαtanβ
【導き方】
三角関数の基本公式のうち、
sinθ
tanθ=───
cosθ
を使うと、
sin(α+β)
tan(α+β) = ────── …(イ)
cos(α+β)
となります。ここで、sin、cosの加法定理の登場です。さあ、加法定理の式、
覚えていますか?忘れそうになった頃に、思い出してみる、これが記憶の強化
になります。このすぐ下に書きますが、思い出してもらうために少し行を空け
ておきますね。では、sin(α+β)、cos(α+β)を書くか、思い浮かべるか、し
てみてください!
OKですか?まだですか?
もう少し行を空けておきましょう。
いえいえ、決して手抜きなんかではありませんから!(笑)
では、書きます。
sin(α+β)=sinαcosβ+cosαsinβ
cos(α+β)=cosαcosβ-sinαsinβ
ですね。これを(イ)に代入します。
sin(α+β)
tan(α+β) = ──────
cos(α+β)
sinαcosβ+cosαsinβ
= ─────────── …(ロ)
cosαcosβ-sinαsinβ
実は、問題はこの次なんです!今、私たちは何を作ろうとしてるんでしたっ
け?まだ忘れるには早いですよ!(笑)そうです。tanの加法定理です。でも、
式に出てきているのはsinとcosだけです。どうしましょう?
そうですね!tanとsin、cosをつなぐ式は
sinθ
tanθ=─── …(ハ)
cosθ
です。cosが分母に来ています。「cosが分母」と、いうことは、、、「cosで
割ればいい!」ということです。つまり、tanとsin、cosをつなげるためには
(ハ)の式を使うのだ、と考え、(ハ)の式を使うためには、cosで割る、と
考えていけばいいのです。
実際には、(ロ)の式の分母と分子をcosαcosβで割ればいいのです。いっ
ぺんにcosαcosβで割ってもいいですし、最初にcosαで割って、さらにcosβ
で割っても構いません。とにかく、sinα、sinβがあるので、cosα、cosβの
両方で割るのです。
sin(α+β)
tan(α+β) = ──────
cos(α+β)
sinαcosβ+cosαsinβ
= ───────────
cosαcosβ-sinαsinβ
sinαcosβ+cosαsinβ
───────────
cosαcosβ
= ────────────
cosαcosβ-sinαsinβ
───────────
cosαcosβ
sinαcosβ cosαsinβ
───── + ─────
cosαcosβ cosαcosβ
= ────────────
cosαcosβ sinαsinβ
───── - ─────
cosαcosβ cosαcosβ
sinα sinβ
─── + ───
cosα cosβ
= ────────── もう少しです!ファイト!!
sinα sinβ
1 - ───・───
cosα cosβ
tanα + tanβ
= ──────── 完成!!
1 - tanαtanβ
tan(α-β)の式も同様に導けますので、こちらは練習問題としておきます。
分数の中に分数が入っているので難しそうに見えますが、その処理もここ最近
で何回も出てきていますので、だいぶ慣れたのではないでしょうか?覚え方も
自分なりに工夫して、前に紹介した式や視覚的な特徴をつかんだりしながら、
うまく覚えてください。忘れても、自分で導けるさ!と考えられるようになれ
ば、ものすごい強みとなりますよ!
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2.Σの不幸
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冒頭にも書きましたが、Σは相当な嫌われ者です(笑)なぜキライか聞いて
みました。生徒たち曰く、
・計算が大変
・面倒くさい
・分からない
・書きにくい(変な形になる)
・とにかくイヤ!
などなど…。
まず、Σそれ自身は、それほど大それた意味は持っていません。ですが、Σ
の公式は多くあり、その導き方はとても分かりづらいのです。そして、教科書
に載っている問題だけでは、Σの使い方がなかなか身につかないのです。これ
がΣの不幸の始まりです。そして、Σの意味について、学校でもあまり丁寧に
解説をしません。問題も簡単に済ませて終わりです。これでは、Σのいい所は
見えてこないと思います。
本当はΣは、シンプルで、いいヤツなんですよ!ただ、それゆえにイロイロ
なところに引っ張り出され、その引っ張り出された所がややこしかったりする
と、あたかもΣが悪いかのような印象を皆に与えてしまったりするわけです。
Σの意味は、ただ
「カウンタの数を1ずつ増やしながら足していく」
それだけなんです。つまり
n
Σ(式)
k=1
について、kに1からnまで順に数を当てはめて(式)を足していくのです。こ
の場合はkがカウンタになるわけですね。もし(式)の中にkが入っていたら、
その都度kに入っている値を代入すればいいのです。で、kに入れる数がnにな
ったらそこでおしまい、です。
k=1,k=2,k=3,…,k=n ←カウンタkに1,2,3,…,nを順に代入
↓ ↓ ↓ … ↓
(式)+(式)+(式)+…+(式) ←その都度(式)を足していく!
(式)の中にkがあったら、カウンタの値を代入
【例】 k=1 k=2 k=3 k=4 k=5
5 ↓ ↓ ↓ ↓ ↓
Σ(k+2) = (1 + 2) + (2 + 2) + (3 + 2) + (4 + 2) + (5 + 2)
k=1
実はΣが持っている意味はこれだけなんです。え?これだけ??と思います
よね?でも、これだけなんです。でも、ここで終わりにするのは何となく気持
ち悪いでしょう。たいていは、この結果がいくつになるのか、計算したくなっ
ちゃうと思います。でも、それはΣの意味そのものとは別の話なのです。ここ
を切り離して考えることが、なかなか難しいのですが、それは次回に。
─…─編集後記─…───…───…───…───…───…───…──
三角関数に引き続き、いよいよΣの登場です。大物登場!って感じですね〜
(笑)実は、Σの話はずいぶん前から書こうと思っていたのですが、下書きを
してあったメモを失くしてしまったのです(T_T)何とか見つけようと、あれ
これ探したのですが見つからず、それでも未練がましく、なかなか書く気にな
れなかったのです。しかし授業でもΣの話をしましたので、書く踏ん切りがつ
きました。何回かに分けて書いていこうと思っています。Σに絡めて数列の話
もするつもりです。
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