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第0015号 加法定理の覚え方


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┃  数学マスターへの道〜少なく覚えてとことん使う〜        ┃
┃         第0015号 (2006/04/05)             ┃
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 高校で数学を教えている現役教師が、数学の勉強の仕方、見方、考え方につ
いて、ちょっとしたヒントをお届けしています。今週から、月・水・金の配信
にチャレンジしてみようと思っています。やや無謀かなとも思いますが(笑)、
その理由については編集後記に書きました。


 合言葉は、

  ☆少なく覚えて、とことん使う!
  ☆センスは身につくもの!

です!


──Contents─────────────────────────────

 1.加法定理の覚え方
 2.たすきがけの練習問題

───────────────────────────────────


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  1.加法定理の覚え方

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 三角関数そのものの基礎は、図がなければ理解は難しいので、このメルマガ
では、図なしで考えられるものについてだけ取り扱うことにします。今回の加
法定理の覚え方もその1つです。加法定理の証明は、やはり図がないと理解す
るのは困難です(図があっても難しいです)から、なぜこれが成り立つのかの
説明は省きます。


 さて、問題の加法定理ですが、以下のとおりです。

  sin(α+β)=sinαcosβ+cosαsinβ
  sin(α-β)=sinαcosβ-cosαsinβ
  cos(α+β)=cosαcosβ-sinαsinβ
  cos(α-β)=cosαcosβ+sinαsinβ


 この4つの式を確実に覚えるようにしてください。これをもとにして数多く
の公式が作り出されるのですから!私は、生徒に教えるときには(特に理系の
生徒には)、いつ聞かれても答えられるように!と言っています。廊下ですれ
違ったときに、「cos(α+β)は?」と聞かれたら、「cosαcosβ-sinαsinβ」
と即座に答えられるようにすること!、と(笑)もちろんこれはジョークです
が、それぐらいの心構えで覚えてほしいということです。


 しかし、気構えだけではやはり忘れてしまう危険性が大いにあります。以前
にも書きましたが、私はこの加法定理がなかなか覚えられず苦労しました。語
呂合わせで覚えるという手もありますが、私はそれでもダメでした。なぜ覚え
にくいか?覚えたはずなのに、あとで不安になるのか?それは、式が非常に似
通っているからです。結局は、sinとcosの組み合わせで式が構成されているの
で、時間が経ったときに「あれ?どっちだっけかな?」と不安になってしまう
のです。


 そこで、私はこの「似通っている」という覚えにくさの原因を逆手に取るこ
とにしました。つまり、同じものが繰り返し使われているなら、そこには何か
規則性があるのではないか?それを見つければ、覚えられるのではないか?と
いうことです。


 さあ、そういった目でもう一度上の式を見てください。ポイントは1つずつ
見るのではなく、4つを並べて見て、そこにある特徴をつかむことです。


 どうですか?特徴が見えてきましたか?ここも練習ですから、私の「答え」
を読む前に、自分で考えてみてくださいね。


 では、私なりの「答え」を書きます。別にこれに限ったものではありません
ので、これ以外は不正解ということではありません。もっといいものが見つか
ったら私にも教えてくださいね(笑)


 まず左辺ですが、ここを見ない人がけっこういます。上からsin、sin、cos、
cosと並んでいることを確認してください。その上で、角度の部分ですが、α
とβの足し算と引き算が交互に並んでいます。つまり、上からα+β、α-β、
α+β、α-βという感じです。これらのことを確認した上で、紙に次のように
書いていってください。見て確認するだけでなく、できれば実際に紙に書いた
方が実感としてよく分かると思います。


  sin(α+β)=
  sin(α-β)=
  cos(α+β)=
  cos(α-β)=


 次に、右辺です。まずは、符号をチェックしましょう。そして式の構造です。
すべて「○△+□▽」というような形になっていますね?それを踏まえた上で
符号を見ると、外側にあるものが+で、内側にあるものが−ですね。つまり、


  sin(α+β)=  +
  sin(α-β)=  -
  cos(α+β)=  -
  cos(α-β)=  +


となっています。私は、これを符号のサンドイッチと呼んでいます。-がハム
みたいに見えたものですから(笑)もちろん特徴さえつかめば、どのように覚
えてもらっても構いません。


 次はsin、cosの並びです。ここも一番左の式を見てください。どう並んでい
ますか?そうですね。左辺のsin、cosの並びと一致しています。だから、こう
覚えます。「sinの加法定理はsinで始まり、cosの加法定理はcosで始まる。」
角度については、横に見るとどの式もα、β、α、βの順に並んでいますね。
さて、問題は左から2番目です。実はここがカギなのです。ここを間違えると
すべて崩れてしまいます。


 ここは、sin(α+β)の式に焦点を絞って覚えましょう。sinの式では、2番
目に来ているのは、cosです。これをしっかりと覚えます。そして、よく見る
と、cosの式も左から2番目はcosです。つまり、そこは縦一列全部cosなので
す。映像として焼き付けておくのもいいかと思います。


  sin(α+β)=sinαcosβ+  α  β まずはココをしっかりと!
          ~~~~~
  sin(α-β)=sinα  β-  α  β
  cos(α+β)=cosα  β-  α  β
  cos(α-β)=cosα  β+  α  β

        ↓ ↓ ↓   左から2番目は縦一列同じだから

  sin(α+β)=sinαcosβ+  α  β
  sin(α-β)=sinαcosβ-  α  β
  cos(α+β)=cosαcosβ-  α  β
  cos(α-β)=cosαcosβ+  α  β


 だいぶ出来てきましたね。最後の仕上げです。符号の後のsin、cosを入れれ
ば完成です。ここは、符号の左側でsinだったところはcosに、cosだったとこ
ろはsinにすればいいのです。つまり、

           ┌────┐
           │    ↓
  sin(α+β)=sinαcosβ+cosαsinβ
        │    ↑
        └────┘

という感じです。これを他のものにも、適用すると、

  sin(α+β)=sinαcosβ+cosαsinβ
  sin(α-β)=sinαcosβ-cosαsinβ
  cos(α+β)=cosαcosβ-sinαsinβ
  cos(α-β)=cosαcosβ+sinαsinβ

という加法定理の式の出来上がりです!最初のうちはこのように、4つをセッ
トにして、しっかりと覚えるようにしましょう。ある程度頭に入ってきたら、
今度は単独の式だけで思い出せるように練習しましょう。


 ここまで、だいぶ長く書きましたが、高校生だと、大体20分でほとんどの生
徒が単独の式でも答えられるようになります。あとは、忘れないようにするだ
けです。覚えたては、2〜3時間後にもう一度、そこでちゃんと覚えていれば、
次は翌日、その後は一日おきくらいに思い出すようにしましょう。これを1〜
2週間やれば、けっこう定着すると思います。まあ、問題を解きながら使って
いくのが一番だとは思いますが。


 それでも忘れそうだと思ったら、理屈を使って強化しましょう。前にやった
方法ですね。これはこれで、保険にもなりますし、また理屈を考えることの練
習にもなります。覚えるときのポイントは、先ほども書いたように、2番目が
sinかcosかを間違えないことですから、この部分に焦点を当てます。


 もし、ここを間違えたとしましょう。すなわち

  sin(α+β)=sinαsinβ+cosαcosβ
  sin(α-β)=sinαsinβ-cosαcosβ
  cos(α+β)=cosαsinβ-sinαcosβ
  cos(α-β)=cosαsinβ+sinαcosβ

としてしまった場合、cos(α-β)の式でβをαで置き換えてみます。そうする
と次のようになります。


  cos(α-α)=cosαsinα-sinαcosα
    └─┐  ┌──┘
      ↓  ↓
      cos0 = 0


これは、cos0=1に反しますので、オカシイということになるわけです。これ以
外でも、矛盾が生じる場合があります。ただ、これはあくまでも保険であり、
これですべて通せるわけではありません。特徴をつかんでしっかりと覚えてお
くことはやはり必要ですから、頑張って覚えるようにしてください。




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  2.たすきがけの練習問題

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 前号までで説明した「たすきがけ」による因数分解をもう少し練習しておき
ましょう。


【練習問題】次の式を因数分解してください。
 (1) 2x^2+x-6
 (2) 6x^2-17x+12
 (3) 3x^2+14x+8
 (4) 6x^2-11x-2


 いつも言っていますように、練習が大切ですから、苦手な人は必ず自分でや
ってみてくださいね。




─…─編集後記─…───…───…───…───…───…───…──

 今回お送りした「加法定理の覚え方」を前号で配信しようと思っていたので
す。前回の内容にプラスしてこれでは、いくらなんでも重過ぎますよね(笑)
途中で、もうお腹イッパイ(>_<)という感じになると思います。なので、
複数回に分けようと思ったのです。

 次号では、三角関数の公式を加法定理を使って導いてみたいと思います。ま
ずは、簡単なところからいこうと思っていますので、ご安心を(笑)因数分解
の続きも回をあらためて、またお送りします。

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【練習問題の解答】
 (1) (x+2)(2x-3)
 (2) (2x-3)(3x-4)
 (3) (x+4)(3x+2)
 (4) (6x+1)(x-2)



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