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第0012号 因数分解(その1)


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┃  数学マスターへの道〜少なく覚えてとことん使う〜        ┃
┃         第0012号 (2006/03/27)             ┃
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 高校で数学を教えている現役教師が、数学の勉強の仕方、見方、考え方につ
いて、ちょっとしたヒントを毎週月・木にお届けします。


 合言葉は、

  ☆少なく覚えて、とことん使う!
  ☆センスは身につくもの!

です!


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  因数分解の公式

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 まず、中学・高校で学習する因数分解の公式を下に掲げます。

【中学で習うもの】
 (1) x^2+2xy+y^2=(x+y)^2
 (2) x^2-2xy+y^2=(x-y)^2
 (3) x^2-y^2=(x+y)(x-y)
 (4) x^2+(a+b)x+ab=(x+a)(x+b)

【高校で習うもの】
 (5) acx^2+(ad+bc)x+bd=(ax+b)(cx+d)
 (6) x^3+y^3=(x+y)(x^2-xy+y^2)
 (7) x^3-y^3=(x-y)(x^2+xy+y^2)
 (8) x^3+3x^2y+3xy^2+y^3=(x+y)^3
 (9) x^3-3x^2y+3xy^2-y^3=(x-y)^3

このうち、(6)と(7)は因数分解中心、(8)と(9)は展開中心で使われます。多い
間違いとしては、

 x^3+y^3=(x+y)(x^2+xy+y^2)
 x^3+y^3=(x+y)(x^2-2xy+y^2)

 (x+y)^2=x^2+y^2
 (x+y)^3=x^3+y^3

といったようなところです。公式を使う場合には、覚え間違えると即アウトで
すから、確実に覚えるようにしてください。覚え間違いをなくす1つの方法は、
自分で分配法則を使って展開をしてみて、その公式が成り立つことを確かめて
みることです。いわゆる証明というヤツですが、意外とこれをやらない人が多
いのです。見て納得するだけではなく、自分でやってみるということは、今ま
でも繰り返し述べてきたように、とても大事なことです。証明と言っても、大
したことはありません。右辺の式を、分配法則を使って展開するだけのことで
す。この際ですから、証明アレルギーも克服してしまいましょう!


 で、覚え方なのですが、メルマガ第3号にも書きました、

  一、規則性を見つける
  一、言葉で言い換えたり、言葉を手がかりにしたりする
  一、導く過程の大まかな流れをつかむ
  一、口で唱える

を使った覚え方を紹介します。中学で習うものについてはごく簡単にし、高校
で習うものを中心に書きます。また、(8)(9)は展開中心でもありますので、パ
スカルの三角形などと併せて覚えるといいと思います。パスカルの三角形につ
いては、別の機会に説明したいと思います。


 (1)(2)は展開、因数分解両方で使います。因数分解で使うときには、公式を
覚えていることを前提に、さらにこの公式に当てはまるかどうかの判断、すな
わちパターンを認識できるかどうかにかかってきます。これは他の場合にも必
要なことですから、問題演習をするときに、書くことにします。

 (3)は言葉を補助として使いましょう。たとえば、

  「和と差の積は2乗の差」(展開用)
  「2乗の差は和と差の積」(因数分解用)

などです。呪文のように唱えて覚えましょう(笑)この公式は、分母の有理化
などでも使いますので、しっかりと覚えてください。


 (4)は展開、因数分解、2次方程式の解と係数の関係など多くの場面で活躍し
ます。これは、公式を覚えて当てはめることを考えるよりも、たくさんの問題
をこなして、自由自在に使えるようになることを目指してください。簡単な式
の計算(同類項をまとめるなど)と同様に、スラスラとできるようになりまし
ょう。


 さて(5)ですが、これはいわゆる「たすきがけ」と呼ばれる因数分解で、高
校数学の最初の関門と言えるでしょう。それまでの中学数学では、やり方を覚
えていればすぐに答えが出てくるものがほとんどだったのが、この「たすきが
け」では、初めて「手探りで答えを見つける」という作業をしなければならな
くなります。あえて言えば、「パズル」のような感覚が必要になるのです。も
ちろん「たすきがけ」にも、正解を見つけるための「コツ」はありますが、頭
を使わずに簡単にできる方法というわけではありません。「たすきがけ」は、
練習も必要ですので、次回に詳しく説明したいと思います。


 (6)(7)は最初に書いたような間違いが多いので、そこをまずは気をつけてく
ださい。その上で、どう覚えればよいかですが、これは式の特徴をつかむこと
と、理屈をちょっと使って覚えます。まず、

  x^3+y^3=(1次式)(2次式)
  x^3-y^3=(1次式)(2次式)

と、おおまかな構造を頭に入れてください。次に、1次式の部分については

  x^3+y^3=(x+y)(2次式)
    │   ↑
    └───┘
     符号が同じ

  x^3−y^3=(x−y)(2次式)
    │   ↑
    └───┘
     符号が同じ

と、式の特徴をつかんでおきます。2次式の部分は、x^2、y^2といった2乗の項
の符号は、「2乗だからプラス」と覚えます。(0以外の実数は2乗するとすべ
てプラスになりますよね?それを利用するのです)そうすると、問題は中央の
項だけとなります。中央の項は最もシンプルに、+xy と -xy のどちらかなの
ですが、上にも書きましたように、ここを2xyとしてしまう間違いがけっこう
あります。これを防ぐ方法としては、もしxyの係数が2だとすると、

  x^2+2xy+y^2 or x^2-2xy+y^2

となるので、さらに( )^2と因数分解できることになります。これでは、

  (1次式)(2次式)

という形に反しますから、マズイわけです。まあ、( )^2の公式を確認のため
にここで使えば、その公式の記憶の強化にもなるので、一石二鳥といったとこ
ろですね。


 さて、大詰めです。x^2+xy+y^2とx^2-xy+y^2のどちらが2次式の部分に入る
かを覚えるには、式の特徴をつかみ、理屈でダメ押しをするというのが、イイ
と思います。すなわち、


☆式の特徴

  x^3+y^3=(x+y)(x^2−xy+y^2)
    │       ↑
    └───────┘
      符号が逆!
  
  x^3−y^3=(x−y)(x^2+xy+y^2)
    │       ↑
    └───────┘
      符号が逆!


☆理屈でダメ押し

  x^3+y^3=(x+y)(x^2+xy+y^2)
            ~~
            ↑
       こうだとすると、符号が全部プラスなので、展開したときに、
       どこかの項が消えることはあり得ない!

だから、

  x^3+y^3=(x+y)(x^2−xy+y^2)

となり、x^3−y^3の方はこれと符号が反対なので、

  x^3−y^3=(x−y)(x^2+xy+y^2)


 さて、いかがでしょうか?初めて聞くと、ナンだか面倒くさいなあ、と思う
かもしれません。しかし、人間は忘れる動物ですから、丸暗記は極力避けて、
なるべく複数の方向から覚えるようにしましょう。また、場合によっては、理
屈からいってこうであるはずだ!というような覚え方も試してみてください。
そうすることによって、公式を忘れにくくなり、式の特徴をつかむ訓練にもな
り、頭も鍛えられるという、一石三鳥が期待できます。決してラクな道ではあ
りませんけどね(笑)




─…─編集後記─…───…───…───…───…───…───…──

 ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。今回も「また」長く
なってしまいました(T_T)もう少し短く切って、こまめにお送りした方がイ
イんでしょうか?正直悩んでいます。ただ、内容が薄くなってしまうのは避け
たいんですよね。。。欲張りですかね…。

 感想・リクエストなどございましたら、下記メールアドレス宛にご連絡下さ
い。

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