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創刊号 「公式」って何?


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┃  数学マスターへの道〜少なく覚えてとことん使う〜        ┃
┃         創刊号 (2006/02/09)              ┃
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 高校で数学を教えている現役教師が、数学の勉強の仕方、見方、考え方につ
いてちょっとしたヒントを毎週お届けします。

 高校生を対象としたメルマガですが、もちろん、大人の方が読んでも目から
ウロコがぽろぽろ、いった感じで面白く読んでいただけると思います。いえ、
むしろ大人の方、特に中高年の方に読んでいただいて、数学に興味を持って貰
うことができましたら、これ以上の喜びはありません。


──Contents─────────────────────────────

 1.創刊に寄せて 数学はできるようになる!
 2.公式って、…きまり?

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  1.創刊に寄せて・・・数学はできるようになる!

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 数学は分かりにくい、難しいといわれる科目です。また、センスが必要とも
言われたりします。では、数学は特別な人しか出来ないものなのでしょうか?
決してそんなことはありません。少なくとも、高校で学ぶ数学の基本的な内容
であれば、自分はどこを切っても文系だ!という人でも理解し、問題を解くこ
とができるようになります。


 私は高校で数学を教えていますが、ちょっとしたきっかけで文系の生徒が、
数学が面白い、試験前に勉強するのが楽しい、と言ってくれるようになった経
験があります。また、以下に述べるような経験もあります。


 高校の数学の中で、嫌われ者のナンバーワンの座を、三角関数と争っている
(笑)Σの計算。そのΣや数列が範囲となっている定期試験で、クラス平均が
7割に達したことがあります。数年前の高校1年生の話です。文系希望者も理
系希望者も混ざっている、ごくごく普通のクラスでした。いえ、むしろ成績が
悪いだとか、ダメなクラスだとかさえ言われていたクラスです。


 確かに、易しい試験にすれば平均点が7割にだってなりますが、ごくごく普
通の問題で、特別に易しかったとは思いません。また、教科書や問題集の問題
と全く同じものを出したわけでもありません。ちなみに、私の勤務している高
校は、偏差値で50前後をうろうろしていますので、特別できる生徒たちとい
うわけではありません。その意味でもごくごく平均的な(笑)生徒たちだと言
えます。もちろん、数学の得意な生徒、不得意な生徒はいますので、数学の学
力的にはバラつきがありました。


 ただ、誤解のないように言っておきますが、何か特別な教え方があって、魔
法でもかけられたように、できるようになったわけではありません。ちょっと
したコツを教えはしましたが、あとは本人たちが頑張って練習した成果だった
のです。まあ、このように書くと美談めいていますが(笑)、実際には、何て
ことはない、小テストをやって合格点が取れなかった生徒は居残り!できるよ
うになるまで帰さない!!と言って居残り勉強をさせたのです。


 それはそれは必死でやっていました。さんざん文句も言っていました。しか
し、途中から変化が現れました。問題に対して一生懸命に計算して、途中で計
算間違えがあったとき、悔しがるようになったのです。そして、正解を出した
ときの喜び、できるようになったときの嬉しさ!これが魔法と言えば魔法です。


 苦労してできるようになったときの喜びは何にも変えがたいものだと思いま
す。そして、それを繰り返し経験したら、もうやみつきです(笑)。


 結局は、「自分で解く」、それが大事なことなのです。ただし、ちょっとし
たコツも必要です。これからの学習に当たって、このメールマガジンの記事に
よって、数学コンプレックスから解放される人が増えることを切に願います。
記事の中には、数学教育の専門家であれば、「常識的だよ」と思うような話も
出てくると思います。一般の方々には余り知られていないこともあるかと思い
ますので、それらも取り上げていきたいと思います。




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  2.公式って、…きまり?

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 何かある公式を教えたとき、「これってきまり?」と聞く生徒がいます。あ
なたも、「数学の公式」に対して、ナンだか良く分からないけど、こうしろっ
て言われたから、とりあえず使わなきゃいけないもの、というイメージを持っ
ていませんか?


 公式に対して、「きまり?」と聞く生徒には、必ずこう聞き返します。
  きまりってことは、誰かが勝手に「決めた」こと?
  じゃあ都合のよさそうな式に変えるって決めても大丈夫?
極端な例を挙げながらそのように聞くと、大抵はそれではダメだ、と答えます。


 たとえば、展開公式で、(以下、2乗は^2と書くことにします)

 (x+y)^2=x^2+2xy+y^2

というものがありますが、これは面倒だから

 (x+y)^2=x^2+y^2

にする、って決めてもいいかな?と聞くような感じです。


 そうすると、「公式」は誰かが決めた「きまり」ではないのだということに
気がつきますが、では「公式」とは何でしょうか。これも例を挙げて説明しま
しょう。次のような計算があったとします。

 (x+y)(x-y)=x^2-xy+xy-y^2
      =x^2-y^2

分配法則を使って、一つ一つ掛けていくと、-xyと+xyがちょうど打ち消しあっ
て0になります。これは、このような計算のときには、いつでも成り立ちます。
いつでも成り立つのなら、途中の計算を端折って、最初と終わりだけをつなげ
て、覚えちゃおう!
つまり、

 (x+y)(x-y)はいつでもx^2-y^2になる。 (日本語)
      ↓
 (x+y)(x-y)=x^2-y^2 (数学語)

として覚えちゃおう!
これが「公式」です。つまり、いいトコ取りして、オイシイ結果だけを覚えて
使っちゃおう!というのが「公式」なわけです。


 ところで、「公式」には使用上の注意があります。利用できる条件、と言っ
てもいいかと思います。要は「どこに目をつけるか」です。この公式で言えば、
ポイントは、2つのカッコの中を見比べてみることです。似ているけど、違い
ますね。どこが似てますか?どこが違いますか?


 そうです。1箇所符号が違うだけです。あとは全て同じ。ここがポイントな
のです。つまり、2つの項でできた式同士をかけたとき、1箇所符号だけが違っ
ていたら、2乗したものだけなる、符号が違っていた項の2乗はマイナスが付き、
符号も全く同じだった項はプラスで2乗、ということです。ちょっと分かりづ
らい書き方をしてしまいましたが、これは次のような計算に応用がききます。

 (-x-y)(x-y)

カッコの中を見てください。見比べて違っているのは、1箇所だけ。それも符
号だけです。ということは、先ほどの公式の出番です。
マイナスが付くのは、符号が違っている項の2乗、ですからx^2にマイナスが付
き、y^2はプラスということになります。すなわち、

 (-x-y)(x-y)=-x^2+y^2

となるのです。上記のことに加えて、-xとxを掛けているから-x^2、-yと-yを
掛けているから+y^2なんだな、と考えられるようになったら完璧です。
では、これはどうでしょう?

 (-x-y)(x-2y)

これはカッコの中は2箇所違うところがあります。ですから、この場合は上の
公式は使えない、ということになるのです。


 ここでは、公式とは何か?という話がテーマですので、この辺にしておきま
す。いいトコ取りが「公式」なのですから、一度覚えたらとことんまで使う!
そう考えて、どこに目をつけていけばいいのかを、ぜひ考えてみてください。
もちろん、このメルマガで、私が編み出した公式の覚え方や使い方を披露して
いきます。ですが、自分流の「公式とのつき合い方」が見つけられれば、あな
たが数学マスターになる日は近いと言えるでしょう。




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 現役高校数学教師が送る「数学マスターへの道」(毎週木曜日発行)
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