第0062号 平方完成のカタチ(その3)

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┃  数学マスターへの道〜少なく覚えてとことん使う〜        ┃
┃         第0062号 (2008/01/26)             ┃
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 高校で数学を教えている現役教師が、数学の勉強の仕方、問題の解き方、考
え方についてちょっとしたヒントをお届けします。

 あまりに間が空きすぎて、こんなメルマガがあったことすら忘れていたよ、
と思われる方も多いかと思いますが…(涙)

 お久しぶりです。そして、ずっと発行できず申し訳ありませんでした。もう
1つお詫びとお願いをさせてください。

 まず発行の回数ですが、今の仕事の状況を考えると、週に2回の発行はやは
り難しそうです。というより、どう考えてもムリですね(涙)週2回どころか
何ヶ月も発行できずにいる始末なのですから。。。そこでしばらくの間、発行
は不定期とさせてください。スミマセン(>_<)、、、

 これから少し時間をかけて、メルマガの対象者の設定を含め、内容や発行回
数をどうするかを考えていきたいと思っています。昨年から、仕事に関係する
ことではありますが、新たに取り組み始めたこともあり、なかなか時間的にキ
ビシイ状況です。

 続きは編集後記で。


 初めて読む方もいるかと思いますので、このメルマガでの記号の書き方につ
いての約束事を2、3書いておくことにします。


 ☆2乗、3乗などの表し方は、^2、^3とします。
 (例)xの2乗 ⇒ x^2

 ☆添え字は_1、_2といった形で書きます。
 (例)数列の初項、第2項などは ⇒ a_1、a_2
    対数の底a ⇒ log_a x



──Contents─────────────────────────────

 1.平方完成のカタチ(その3)
 2.うまい方法に思えるけど、意外とミスしやすい平方完成の「あるワザ」

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  1.平方完成のカタチ(その3)

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 前号までで、平方完成とは (  )^2 の中にxをすべて入れてやる変形であ
るということを書きました。では、何故このような形に変形することを考える
のでしょうか?言い換えると、このような形に変形すると何がイイのでしょう
か?今回はこのことについて考えてみます。


 2次式 ax^2 + bx + c の値はxの値によって、色々と値が変化します。その
中で定数項だけはxの値に関係なく一定の値ですから、ここでは簡単のために
省略し、ax^2 + bx という式について考えることにします。


 ax^2 + bx についてxの値を1つ決めてやると、それに対して ax^2 と bx
の2つの値が決まり、それらを足すことで ax^2 + bx の値が決まってきます。
xの値を変えると、ax^2 の値も変わるし、bx の値も変わります。つまり、xの
値1つに対して、2つの式の値を考えなければならないのです。これはかなり
大変なことです。そこでxが (  )^2 の中にすべておさまっていてくれれば、
xの値を1つ決めると (  ) の中の値が決まり、それを2乗すれば (  )^2
の値がすぐ決まります。(  )^2 の外には定数しかありませんから、そこはx
の値によって変化はしません。ということは、元々は2つの値の変化を同時に
考えなければならなかったものが、1つの値を考えるだけでよくなったという
ワケです。


 また、ある数を2乗した値は必ず0以上であるという性質も大きなところで
す。(もちろん、実数の範囲で考えた場合でのことですが…)これは2次関数
の最大値・最小値や不等式などで効果を発揮します。たとえば、x^2 + 6x は
平方完成をすると

  x^2 + 6x = (x + 3)^2 - 9

となります。xに色々な値を代入するとそれに応じて x + 3 の値も変わってい
きます。しかし、どんな値をxに代入しても、x + 3 を2乗しますので、そこ
は常に0以上の値を取ります。xに-3を代入したときだけ0となりそれ以外で
はプラスの値となるのです。すなわち、どんなxの値に対しても

  (x + 3)^2 ≧ 0

という不等式が成り立つのです。したがって、この両辺から9を引くと

  (x + 3)^2 - 9 ≧ -9

となるので、最初の x^2 + 6x は、xにどんな値を入れても、-9以上の値にな
る、ということが分かります。言い換えれば、どんなに小さくなっても-9が限
度であり、その状態は (x + 3)^2 の値が0になるとき、すなわちxの値が-3の
ときに起きる、ということがこの式から分かるのです。(つまり、x=-3 のと
き、この関数の最小値が-9だということです)これは平方完成する前の式を見
ているだけでは、到底分からないことでしょう。


 このように2つ(あるいは3つ以上)の値を同時に考えることが難しい場合
には、考えるべき場所を減らせるように工夫して考えるというアイディアは、
色々な場面で役に立ちます。中学で習った連立方程式の解き方なども、似たよ
うなアイディアによるものだと言えます。色々な計算の中にどんな工夫やアイ
ディアがあるのかを考えながら、教科書や問題集の解答を見ていくと、新しい
発見があると思いますし、数学のセンスを磨いていくことにもつながると思い
ます。


                     (平方完成のカタチ・終わり)




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  2.うまい方法に思えるけど、意外とミスしやすい平方完成の「あるワザ」

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 平方完成の問題を採点していると、塾や家庭教師に教わったのかそれとも自
分で見つけたのか分かりませんが、ちょっと変わった方法で平方完成をしよう
とする生徒がいます。うまくやれば正しい結果を導くことができますし、うま
くやれば部分部分での計算はラクになるという方法です。ですが、実はこの
「うまくやれば」というところが案外にクセモノでして、教わったときはなる
ほど〜!!と思っても、しばらくすると、肝心な部分を忘れてしまい、結局正
しく使うことができなくなってしまうことがよくあります。


 前置きが長くなってしまいましたが、その方法とその問題点について具体的
な問題を使って説明したいと思います。


【問題】y = -x^2 + 4x - 3 を平方完成しなさい。

 通常は、x^2 の係数である-1で2次の項と1次の項をくくるのですが、符号の
間違いをしやすいからということで、両辺に-1を掛けて計算していく、という
方法です。つまり、

  y = -x^2 + 4x - 3

の両辺に-1を掛けると、両辺のすべての項の符号が変わり

  -y = x^2 - 4x + 3

となります。右辺のx^2の係数が1になりましたので、この平方完成はラクです
よね。

  -y = x^2 - 4x + 3

    = (x - 2)^2 - 2^2 + 3

    = (x - 2)^2 - 4 + 3

    = (x - 2)^2 - 1

ここまできたら、最後に両辺にもう一度-1を掛けて

  y = -(x - 2)^2 + 1

とやって出来上がりです。第38号の練習問題で同じ問題を扱っていますが、そ
のときの解答と見比べると、こちらの方がラクそうに見えます。すごくうまい
方法に見えるのですが、実は重大な欠点が1つあるのです。


 それは、、、最後に両辺に-1を掛けるのを忘れてしまいやすい、右辺だけに
-1を掛ける(=右辺の符号を全て変えるだけ)ことをしがちである、といった
トコロです。正しいやり方を理解し、正しく計算すれば問題はありません。で
すが、こういった方法を教えられて使おうとする人の多くは、

  数学が苦手

である可能性が高いのです。少なくとも、x^2の係数が1じゃないと平方完成が
できないという状態だと思います。なぜなら、普通の方法で平方完成がスラス
ラできるようになっているのであれば、あえて違う方法を教わることは少ない
だろうと考えられるからです。


 ここに大きな問題点があるのです。数学が苦手であったり、ちょっと複雑な
計算になると分からなくなってしまうという人が、上の方法を十分理解し、最
後の最後まで気を緩めずに計算していくことができるのだろうか?と考えると、
ムズカシイ気がするのです。もちろん、目からウロコが落ちた!という感じで、
使いこなせるようになる人もいるとは思います。でも、そういった人は多くな
いのではないかと思います。きちんと調査したわけではありませんので、単な
る憶測に過ぎないかもしれません。ただ、2次関数の学習の後、しばらく時間
が経ってからテストをすると、右辺の符号だけを変えてしまったり、x^2の係
数で右辺だけを割ったりして、正しく平方完成できない生徒は少なからずいま
す。それらの生徒が皆この方法でやろうとして間違えたのかどうかは分かりま
せん。しかし、こういった誤りを見ていると、この方法をうまく使いこなすの
は案外難しいのではないかと思うのです。


 決して間違った方法ではありませんし、一見ラクに計算できそうに見える
(実際ややラクになります)ので、つい誘惑されそうになるのですが、長い目
で見た場合、やっぱり普通の方法で平方完成した方が、応用がきくということ
もあり、ベターなのではないかと私は思っています。


 最終的には、自分がやりやすいと思う方法で解けばいいと思いますが、もし
頻繁に間違えてしまうのであれば、間違えにくくする手を考えるか、方法その
ものを見直すようにした方がいいと思います。




─…─編集後記─…───…───…───…───…───…───…──

 昨年の6月にコーチング関連の本を読み、これは教育現場においても有効に
機能する手法だという直観がありました。その後、コーチングそのものとコー
チングを学ぶ方法について調べたり本を読んだりしました。その結果、「教育
という場において、コーチングは確かに有効だ」と確信しましたが、「全体指
導が行われることの多い学校現場において、どう取り入れればよいのか?」と
いうことについては、悩みました。悩んだ末に出した答えは、まずは私自身が
コーチとしての技術を身につけ、その上で学校現場へどう取り入れるかを考え
ようということでした。
 そして、昨年末からコーチング・スキルのトレーニングを受け始めました。
始めてからまだ2ヶ月ですが、コーチングの勉強をし始めてから、自分の中で
大きな変化が見られました。周りからも生徒に対する接し方が変わったという
評価を貰いました。もちろん私自身にもコーチをつけ、コーチングを受けてい
ます。
 コーチングに関しては、いずれまたきたいと思っています。クライアントの
募集などもしたいですしね(笑)まだ駆け出しコーチですので、生涯学習開発
財団の認定コーチの資格を取るまで(今年の8月に取得予定)はモニター料金
にしようと思っていますので、今ならお買い得かと(笑)いずれにしても本業
の授業や仕事がありますので、そんなに多くの方をコーチすることはできない
と思います。多くても5名が限度でしょう。早い者勝ち、みたいなもんですね
(^^ゞ
 というような事情がある関係で、メルマガの発行を不定期とさせていただき
たいのです。つくづく勝手だなぁ、と思う次第なのですが、いずれ何らかの形
で還元できればいいなと考えております。
 愛想を尽かさずにお付き合いいただけると嬉しいです。今後ともどうぞ宜し
くお願いいたします。

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